第66話 鍛冶街防衛会議
鍛冶街の中央広場。
ドワーフたちが集めた長机の周囲に、各種族の代表が並んでいた。
オルドはその中央に立ち、カイとフィオナを伴って会議の始まりを宣言する。
「――異端狩り将軍マクシミリアンが生き延び、軍を率いてこの街に迫っている。
ここで踏み止まらなければ、すべてが炎に呑まれる」
だが、その言葉にすぐ異論が飛んだ。
「そもそも原因はそちらではないか!」
サラマンダー族の戦士が椅子を叩く。
赤い鱗の肌を怒りで赤く染め、カイを睨みつけた。
「人間どもに目をつけられたのは、お前らが奴隷を解放したからだ!」
「ウンディーネ族の子らも捕らえられている!」
「ノーム族の洞窟も焼かれた!」
「抗えば抗うほど、奴隷は増えるのだ!」
次々と非難が浴びせられる。
カイは拳を握りしめたが、反論の言葉が出てこない。
胸に突き刺さるのは、ディランの死。
確かに、彼を巻き込んだのは自分だ――。
その時、長老の椅子が音を立てて動いた。
白髪のエルフ長老が立ち上がり、杖を突きながら前に出る。
「……お前たちの言い分も理解できる。
長き時を生きた我ら精霊族は、いつも怯え、逃げ、ただ静かに耐えてきた。
その結果どうなった? 奴隷は増え、仲間は奪われ続けてきたのだ」
ざわめきが広場に広がる。
長老の瞳は静かに光り、カイに向けられた。
「この少年は……立ち向かった。
恐怖に震えながらも、仲間を守るために拳を振るった。
その勇気こそ、我らが長き時を経ても忘れていたものだ」
言葉を失ったカイの背に、フィオナがそっと手を添える。
紅と蒼の瞳が、再び強く燃え上がった。
「俺は……もう誰も失わない。
そのために、この拳を振るう」
広場に静寂が落ち、やがて各種族の代表たちが視線を交わす。
最初に口を開いたのは、シルフ族の長だった。
「……我らの風は、矢を逸らす盾となろう」
続いて、ノーム族。
「地下から支柱を打ち込み、砦を強固にする」
ウンディーネ族。
「炎を鎮める水流を、泉から引き入れよう」
サラマンダー族。
「我らの炎で、奴らの砲台を焼き尽くしてやる」
そしてトレント族。
「大地に根を張り、城門を覆う盾となろう」
それぞれが己の力を掲げると、広場に大きなどよめきと決意の声が広がった。
「……よし。ならば我らは総力を挙げて戦う!」
オルドの叫びに、ドワーフたちが槌を振り上げ、エルフたちが弓を掲げる。
鍛冶街の防衛戦は、すべての種族の力を結集した「総力戦」として始まろうとしていた。




