第65話 不穏なる報せ
鍛冶街に朝の光が差し込む。
昨日完成した新たな武具を抱え、カイたちは街を歩いていた。
赤い炉の煙、鉄を打つ音、子供たちの笑い声――そこには確かに平和があった。
「……なんだか夢みたいだな」
カイが拳を見つめ、思わず呟く。
フィオナは柔らかく微笑み、杖を撫でた。
「ええ。でも、その夢を守らなければならないわ」
オルドも無骨な腕を組み、戦鎚を背に負いながら頷いた。
「この街は俺の故郷だ。炉を渡すくらいなら命を投げ出す」
そんな矢先――。
「緊急報せだ!」
門番のドワーフが駆け込んできた。
息を切らせ、声を張り上げる。
「焼け落ちたはずの森に、王国の旗が再び立った! 異端狩り将軍……あのマクシミリアンが、生きている!」
広場にどよめきが走る。
「馬鹿な……あれだけの炎に呑まれて……」
「死んだはずだ……!」
だが門番の言葉は続いた。
「満身創痍ながら、禁呪で肉体をつなぎ止めたらしい。
軍を再編し、こちらへ向かっていると!」
カイの拳が震えた。
思い出すのは、仲間ディランの最期。
あの狂信の炎を再び放てば、今度は鍛冶街が灰となる。
「……来るなら、受けて立つだけだ」
カイは低く呟いた。
紅と蒼の瞳が決意に燃える。
フィオナが杖を握りしめ、オルドは戦鎚を肩に担ぐ。
その瞳に宿るのは――守るべきものを絶対に渡さない誓いだった。




