第64話 鍛冶場の夜明け
翌朝。
鍛冶街の中心にある大工房に、炉の赤い光が揺れていた。
ドワーフたちが一斉に槌を振るい、鉄と炎の音が夜明けの鐘のように鳴り響く。
「ここが……」
カイは目を見開いた。
無数の炉が並び、鉄の匂いと熱気が空気を満たしている。
まるで街そのものが一つの巨大な鍛冶炉のようだった。
オルドは工房の中央に立ち、懐かしい表情を浮かべていた。
「……やはり帰ってきたか、この音に」
仲間たちの武器を打ち直すため、ドワーフ職人たちが次々と作業に取りかかる。
◆カイの新装備
黒鉄のガントレットは、かつての戦いで焦げて歪んでいた。
炉に投げ込まれ、精霊鉄と秘鉱を混ぜ合わせた合金で補強される。
「――《双紋の拳鎧》だ」
完成したそれは、紅と蒼の紋が左右の拳に刻まれ、握るたびに淡い光を放った。
カイが拳を振ると、空気が震え、炎すら吹き飛ばす力が宿っていた。
◆フィオナの新装備
蒼樹の杖は魔力の奔流に耐え切れず、表面にひびが入っていた。
ドワーフの職人たちは、森羅の書から抽出した魔素を杖に織り込み、法衣にも新たな精霊紋を刻んだ。
「――《蒼樹律杖》」
虹色の光が杖の先に宿り、六属性の魔法陣が浮かび上がる。
彼女が手をかざすと、周囲の大気そのものが律動を始めるようだった。
◆オルドの新装備
オルドの大槌は炎に焼かれ、砕けかけていた。
彼は炉の前に立ち、仲間たちのため自ら槌を振るう。
「俺の新たな相棒だ……《轟鉄隕槌》!」
その槌は黒鉄と隕鉄を融合させ、頭部に流星紋を刻んだ巨大な戦鎚。
振り下ろせば地を震わせ、岩をも粉砕する轟音を響かせる。
カイは新たな拳を見つめ、フィオナは杖を握り、オルドは戦鎚を肩に担ぐ。
三人の視線が交わり、力強い笑みが広がった。
「これなら……どんな炎も打ち破れる!」
カイの言葉に、工房のドワーフたちが一斉に歓声を上げた。




