第63話 鍛冶街の温泉
鍛冶街の奥、岩をくり抜いて作られた洞窟の中には、大きな湯けむりの立つ温泉があった。
火山の力をそのまま利用した湯は、肌に心地よい熱を宿している。
「おぉ……これは最高だな!」
カイは肩まで浸かり、思わず声を上げた。
ここしばらくの戦いで張り詰めていた体と心が、ようやく解き放たれていく。
「ふん、山の湯は肉体を鍛えるのに最適だ」
オルドは豪快に湯をかき回しながら、大の字になってくつろいでいる。
その胸板は湯気の中でも岩のように分厚かった。
一方、岩で仕切られた向こう側からは、女性陣の声が聞こえてくる。
「ふぅ……気持ちいい……」
フィオナの柔らかな吐息が響き、カイは思わず耳まで赤くなる。
その隣でエルフの娘たちが笑い声を上げていた。
「フィオナ様って、全然変わらないんですね……」
「私たちなんかよりずっと……」
「やめて。私はただの仲間よ」
フィオナはそう言いながら湯を手ですくい、顔にかけた。
月明かりに照らされた彼女の白い肌と長い髪は、湯気に包まれ幻想的に見えた。
「……おい、若造。耳が真っ赤だぞ」
オルドがニヤリと笑い、カイの背を豪快に叩いた。
「な、なんでもねぇよ!」
慌てて否定するカイに、酒蔵で酔いつぶれたことを思い出したドワーフたちが爆笑する。
やがて、女性側から突然の声が飛んできた。
「ちょっと! 覗こうとしてないでしょうね!?」
「してないって!」
カイが慌てて立ち上がると、滑って湯に沈んでしまった。
湯面から顔を出すと、オルドは腹を抱えて笑っていた。




