第62話 ドワーフ酒蔵の夜
鍛冶街に到着して間もなく、オルドの帰還を祝うためにドワーフたちが宴を開いた。
舞台は石造りの大広間にある酒蔵。
巨大な樽が壁際に並び、香り高い酒の匂いが辺りを満たしている。
「さぁ飲め! 飲め! 英雄の仲間たちよ!」
豪快なドワーフたちが木杯を差し出し、一行の前に次々と酒が並べられた。
カイは恐る恐る口をつけた瞬間、顔をしかめる。
「うっ……つ、強ぇ……! なんだこれ……!」
次の瞬間には顔が真っ赤になり、テーブルに突っ伏してしまった。
「ははは! 若造にはまだ早かったな!」
オルドが大声で笑い、自分の杯を一息に飲み干す。
その姿に酒蔵のドワーフたちは「さすが英雄!」と歓声を上げた。
一方、フィオナは杯を受け取り、静かに口をつける。
その仕草は優雅で、仲間たちは「少し飲んで顔を赤らめるくらいだろう」と思った――が。
「……ふぅ。意外と悪くない味ね」
涼しい顔で二杯目を受け取るフィオナ。
エルフの娘が慌てて止めに入るが、彼女は平然と飲み干し、周囲を唖然とさせた。
「フィオナ……強すぎ……」
カイは半分寝言のように呟いた。
酒蔵の片隅では、ドワーフたちが「飲み比べ大会だ!」と騒ぎ出す。
オルドが当然のように参加し、豪快に樽を抱えて飲み始めると、他の挑戦者たちは次々に脱落。
結局、彼だけが最後まで立っていた。
「……やはり鍛冶には酒が一番だ」
誇らしげに胸を張るオルドの姿に、酒蔵は再び笑い声で揺れた。




