第57話 灰の誓い
戦いの終焉を告げるように、燃え盛っていた炎は静まり、森は黒い灰に覆われていた。
焦げた大地の上で、カイは拳を握りしめたまま立ち尽くす。
紅と蒼の瞳は涙で濡れ、肩は激しく震えていた。
その視線の先――。
血に塗れたディランの身体が横たわっている。
狼耳は静かに伏せられ、その顔には苦痛ではなく、どこか満足したような安らぎがあった。
「……ディラン……!」
カイが膝をつき、彼の手を握る。
まだ温もりが残っていた。
しかし、その温もりは少しずつ、確実に消えていく。
フィオナが震える声で呟いた。
「……私の魔法でも……もう……」
蒼樹の杖を抱くその手は、悔しさで強く握られていた。
オルドは黙して目を閉じ、低く言った。
「……あいつは、最後まで仲間を守るために戦った。
誇ってやれ、若造」
誰も言葉を返せなかった。
仲間を失った痛みが、森に沈黙を落としていた。
やがてカイは立ち上がった。
涙を拭わず、そのまま灰色の空を睨みつける。
「……もう二度と、仲間を死なせない。
ディランの命を……無駄にはしない」
その言葉に、仲間たちがゆっくりと顔を上げた。
ハルドは拳を握りしめ、フィオナは涙を拭って頷いた。
奴隷として生きるしかなかった者たちが、今や“解放の同志”となろうとしていた。
灰に包まれた森の中で、カイは誓う。
「この拳で……すべての鎖を断ち切る。
これがオレたちの道だ!」
その声は炎の残滓を突き抜け、空へと響き渡った。




