第54話 燃え尽きる森
燃え盛る炎が森を覆い尽くしていた。
木々は悲鳴を上げるように爆ぜ、煙が空を黒く塗りつぶす。
その中心で、大槍を構えたマクシミリアンが悠然と歩みを進める。
「逃げ場はない。異端は浄火に抱かれて死ね」
将軍が槍を振り下ろすと、炎の奔流が地を這い、フィオナとカイを呑み込もうと迫った。
「――《森羅裁断》!」
フィオナが杖を掲げ、緑の魔法陣を展開する。
光の葉が無数に舞い、炎を切り裂こうとするが――。
轟音。
炎は葉を飲み込み、根を焼き尽くし、フィオナの魔法陣そのものを崩壊させた。
「うそ……私の魔法が……!」
フィオナの瞳が大きく揺れる。
森を支配していた精霊の力すら、狂信の炎の前ではかき消されていく。
オルドが吼え、大槌を振り回す。
「うおおおおッ!」
しかし彼の武器もまた、炎に焼かれ、軋みを上げながら赤く変色していく。
「……ちっ、このままでは鉄すら灰になる……!」
仲間たちの間に恐怖が広がった。
ディランは狼耳を伏せ、震える声で叫ぶ。
「こんな……勝てるわけねぇ……!」
「退けない!」
カイが吼える。
だが炎は止まらず、兵士たちが笑いながら火刑台に松明を近づけていく。
縛られたエルフの子供の泣き声が、燃え盛る音にかき消されそうだった。
「異端に未来はない。――全て灰となれ」
マクシミリアンの声が、燃え尽きた森に響き渡った。
絶望。
それでも誰も、まだ膝をついてはいなかった。




