第53話 異端浄火の檻
森は地獄と化していた。
マクシミリアンの槍から迸る炎が樹木を焼き、空を赤く染める。
燃え上がる熱気が肌を刺し、仲間たちは息をするだけでも苦しい。
「くっ……! こんな火力、人間の魔術じゃない……!」
フィオナが杖を掲げ、必死に水と風の魔法を紡ぐ。
だが、緑の魔法陣から生まれた葉の壁も、風の結界も、炎に触れた瞬間にはじけ飛んだ。
「フィオナ!」
カイが叫び、彼女を庇おうと踏み出す。
だが、頭上から炎の雨が降り注ぐ。
「《異端浄火》はすべてを焼き尽くす。お前たちの涙も、祈りも、存在すらもな」
マクシミリアンの声は冷たく、狂信に満ちていた。
その背後では、泣き叫ぶエルフの子供が火刑台に縛られ、兵士が松明を掲げている。
フィオナの瞳が恐怖と怒りに揺れた。
「やめて……! その子を解放しなさい!」
「異端の芽は早いうちに摘むべきだ」
将軍は淡々と告げ、炎の大槍を振りかざす。
その瞬間――。
「ぬおおおおッ!」
オルドが吼え、鍛え上げた大槌を振り下ろした。
鉄の塊が炎の奔流を打ち払う。
だが、炎は鉄を嘲笑うかのように槌を包み込み、表面が赤く焼けただれていく。
「……ぐっ……俺の武器が……溶けるだと……!」
オルドの額に汗が噴き出す。
精霊鉄すら焼き尽くす、異端狩り将軍の炎。
「これが……人間の狂気……」
ハルドが呻き、仲間たちが声を失う。
炎は森を檻のように囲み、逃げ場を奪っていた。
まるでマクシミリアン自身が「この場で焼き殺す」と宣告しているかのように。
「さあ、次はどちらを焼こうか。混血か……それとも精霊か」
将軍の冷酷な瞳が、フィオナとカイを射抜いた。




