第51話 精霊の加勢
王国兵の侵攻は止まらなかった。
盾を構えた重装歩兵が前列を固め、その背後から槍兵が列をなして迫ってくる。
森を踏み荒らし、数の暴力で押し潰そうとする。
「数が……多すぎる!」
カイが拳を振るっても、倒せばすぐに次の兵が詰め寄ってくる。
その時――。
「……そこまでです」
冷たい声が響いた。
蒼樹の杖を掲げ、フィオナが前へ歩み出る。
緑の瞳は怒りも焦りもなく、ただ静かな冷徹さを湛えていた。
「精霊の加護に逆らう者には――裁きを下す」
地面に巨大な魔法陣が浮かび上がり、森全体が震えた。
緑光が渦を巻き、兵士たちの足元から光の根が伸び始める。
「な、なんだこれは!?」
「足が……抜けないっ!」
兵士たちが恐怖に顔を歪める。
フィオナの声が森に響いた。
「――《森羅裁断》!」
光の葉が空から降り注ぎ、鋭い刃となって兵士たちの列を一気に切り裂いた。
根が絡みつき、逃げようとする者を引き倒し、光の奔流が次々と甲冑を貫いていく。
「ぎゃああああッ!」
「ば、化け物だ! 精霊族の魔女だ!」
「退け、退けぇぇッ!」
統制されたはずの王国兵の列は、瞬く間に崩れ去った。
森を蹂躙しようとしていた兵たちが、今や恐怖に駆られ森から逃げ出していく。
戦場に残されたのは、立ち尽くすカイと仲間たち、そして満月の光を浴びて杖を下ろすフィオナの姿だけだった。
彼女は静かに微笑む。
「これで……みんなを守れるわ」
その笑みを見た時、仲間たちの胸に灯ったのは安堵――
だが王国兵にとっては、決して抗えぬ恐怖だった。




