第50話 迫る王国兵
週末なので時間差で少し多めに投稿しますよ。
昼下がりの森がざわめいた。
鳥たちが一斉に飛び立ち、地響きが大地を伝う。
精霊の集落の見張りが駆け込んでくる。
「――王国兵が! 森の入り口に数百の兵が押し寄せています!」
広場に緊張が走った。
子供たちが母にしがみつき、老人は震える手で杖を握る。
仲間たちの表情からは、せっかく芽生えた安らぎが再び恐怖に塗り潰されていく。
その時、カイが一歩前へ出た。
紅と蒼の瞳が、燃えるように揺らめいている。
「……オレが行く」
彼の両拳には、新しく装備した黒鉄のガントレットが光を受けて鈍く輝いていた。
オルドが鼻を鳴らす。
「チビ、試す時が来たな。その拳が守るべきものは何だ?」
カイは力強く頷いた。
「仲間だ。……全部守る!」
森の入り口。
槍と盾を構えた王国兵が整然と列を組んで進軍してくる。
その数は圧倒的だった。
「奴隷どもを捕らえろ! 精霊族もろとも火にくべろ!」
罵声が響いた瞬間、カイが飛び出した。
地面を蹴る音と共に、拳が火花を散らす。
「――うおおおおおッ!!」
ガントレットを纏った拳が盾を叩き割り、兵士を宙に弾き飛ばす。
鋼鉄を砕く衝撃が、腕を通して伝わる。だが手は傷つかない。
オルドが打った鉄が、確かにカイの拳を守っていた。
「こいつは……! 力が溢れてくる!」
さらに迫る兵士の槍を、ガントレットで受け止める。
鉄と鉄が激突し、火花が散る。
カイは拳を振り抜き、三人をまとめて吹き飛ばした。
「すげぇ……! 本当に人間かよ!」
ディランが狼耳を震わせる。
「いや……解放者だ」
ハルドが低く呟いた。
広場から仲間たちの歓声が上がる。
恐怖の中で初めて見た、“人間に抗う力”。
カイの拳は、確かにその象徴となっていた。
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