第46話 鍛冶師オルド
精霊の集落に受け入れられた夜。
一行は森の泉のほとりで休息を得ていた。奴隷たちにとっては初めて“追われる恐怖のない夜”だった。
その頃、カイと数人は長老に案内され、とある工房を訪れていた。
巨木をくり抜いて作られた工房の奥には、炉が赤々と燃え、鉄を打つ音が響いていた。
――カン、カン、カン。
「中にいるのが“鍛冶師オルド”。この集落で最も古く、最も腕の立つ鍛冶師だ」
長老がそう言った。
やがて、ひときわ大きな影が姿を現す。
背は高く、髭をたくわえ、頑丈な腕には筋肉が盛り上がっている。
外見は五十代ほどに見えるが、その瞳は鋭く、年月を刻んだ深い輝きを放っていた。
「……ふん、また人間か」
オルドは炉の火を背にして腕を組み、鋭い視線をカイに投げた。
「人間じゃない。オレは……混血だ」
カイが真っ直ぐに答えると、オルドは目を細めた。
「どちらにせよ、鎖を作った種族だ。……信用ならん」
空気が一気に張り詰める。
だが、フィオナが一歩前に出た。
「オルド、お願い。彼らは私と同じ。鎖に繋がれていた者を解放して……ここまで来たの」
その言葉に、オルドの瞳がわずかに揺れた。
だが彼はすぐに顔を背け、炉の火に薪を投げ込んだ。
「……ふん、口先だけなら誰でも言える。
もし本当に奴隷を解き放つ力があるのなら――この“火”に証明してみせろ」
「証明……?」
カイが問い返すと、オルドは無骨な手で槌を掲げた。
「戦い続けるための“武器”を打つには、心を込めた覚悟が要る。
お前にそれがあるか、試してやろう」
そう言い放ったオルドの姿は、まるで巨大な岩のように揺るぎなかった。




