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第43話 精霊領への道

 翌朝、一行は兎人族の老婆の言葉に従い、森の奥深くへと足を踏み入れた。

 木々は次第に高くなり、幹は太く、枝葉は陽光を遮るほどに生い茂っている。

 空気は澄み、風にはどこか甘やかな香りが混じっていた。


「……なんだ、この感じ」

 ディランが鼻をひくつかせる。

「森なのに、妙に落ち着く匂いがする」


「精霊族の領域が近い証拠だ」

 ハルドが答える。

「空気そのものが魔力を帯びている……気を抜くな」


 奴隷たちはざわめきながらも、周囲の美しさに目を奪われていた。

 苔むした岩には光の粒が舞い、鳥たちの声は澄んで響き渡る。

 まるで人間の国とは異なる世界に足を踏み入れたかのようだった。


 その中で、フィオナはじっと立ち止まった。

 長い耳が震え、緑の瞳が潤む。

「……懐かしい。ここは……私の故郷に似てる」


 カイが隣に立ち、彼女の横顔を見た。

「フィオナ……」


 彼女はかすかに笑い、森の奥を見つめた。

「ここに来ることになるなんて思わなかった。

 でも……この道を選んだのは、きっと意味があるんだね」


 その言葉に、カイは頷いた。

「絶対に辿り着こう。精霊領に」


 ――しかし、森の奥へ進むにつれて、緊張も高まっていった。

 枝葉の隙間から差す光が不意に揺らぎ、風に混じって囁くような声が聞こえる。


「……聞こえるか?」

 ディランが低く言った。

「人の声じゃない。……森が、俺たちを試してる」


 その言葉に、皆の背筋が凍る。

 精霊領への道は、美しいだけではなく――必ず試練を伴うものだった。

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