第40話 仲間の力
王国兵の列が迫り、槍の穂先が朝日に鈍く光った。
森の小道に緊張が走り、逃げる奴隷たちの悲鳴が響く。
「俺に任せろォッ!」
ディランが咆哮し、狼の爪を振るうように拳を叩き込んだ。
兵士が宙を舞い、木に激突する。
その背後ではハルドが冷静に指示を飛ばす。
「右から回り込んでいる。沢へ誘導しろ! 足跡を消すんだ!」
彼は木の枝を叩き落とし、土を乱して進路を偽装する。
「さすがだな、ハルド!」
ディランが叫びながら敵を殴り飛ばす。
恐怖を押し殺し、彼の動きには今や狼族らしい闘志が宿っていた。
だが、数は多い。
槍を構えた兵士が母子を狙って突進してきた。
「しまった!」
ディランが振り返ったその瞬間――。
「――っ!」
フィオナが震える手で弓を引き絞り、放った。
矢は一直線に飛び、兵士の槍を弾き飛ばす。
母子は間一髪で救われた。
「……当たった……?」
フィオナの声はか細いが、確かに驚きと安堵が混じっていた。
ディランが振り返り、にやりと笑った。
「やるじゃねぇか、フィオナ!」
カイも拳を振るいながら叫ぶ。
「フィオナ! 今のすごいぞ!」
胸にこみ上げる熱。
ずっと心に刺さっていた“無力”という言葉が、少しずつ溶けていくのを感じた。
「……私にも、できるんだ」
フィオナは小さく呟き、再び弓を構えた。
仲間の力が重なり、森の小道は確かに切り開かれていく。
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