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第27話 解放の余韻

 白銀騎士団が去った後の地下水路は、ただ静寂に包まれていた。

 瓦礫と血の匂い、冷たい水音だけが残り、戦いの余韻が重苦しく漂っていた。


 カイはアリシアを抱きかかえ、必死に声を掛け続けた。

「アリシア……なぁ、立ってくれよ……! 一緒に奴隷を解放するんだろ!? ここで死んじゃダメだ!」


 だが、彼女の呼吸は浅く、胸に刻まれた呪印は黒く焼け焦げていた。

 戦いの中で力を使い果たし、命を削り尽くしてしまったのだ。


「……カイ」

 微かに動いた唇から、彼女の声が漏れる。


「あなたは……もう立派に戦ったわ。

 だから……これからは、あなたが……みんなを導いて」


「そんなの……オレにはできない!」

 少年の瞳から涙が溢れ落ちる。


「できるわ……。あなたは、もう……誰よりも強いから」

 アリシアの手が、弱々しくカイの頬を撫でた。

 その指は冷たく、それでも温もりを残そうとするかのように震えていた。


「……私の命は、呪われて生まれた。

 でも……最後に、あなたと出会えて……解放のために戦えて……幸せだった」


「やめろよ……! そんな言葉いらない!」

 カイは叫び、必死に彼女の体を揺さぶる。


 しかしアリシアは静かに微笑んだ。

 紅の瞳がわずかに潤み、最後の力で言葉を紡ぐ。


「……カイ。あなたは……解放者になって」


 その瞬間、アリシアの瞳から光が消えた。

 短剣が手から滑り落ち、水路に鈍い音を立てて沈んだ。


「――アリシアぁぁぁぁぁッ!!!」


 カイの叫びが地下に響き渡る。

 奴隷たちは涙を流し、誰もがその死を悼んだ。


 やがて少年は、嗚咽の中で拳を握りしめた。

 紅と蒼の瞳が、強い光を宿す。


「……オレは誓う。

 アリシア、お前の願いを……オレが叶える。

 必ず、奴隷を全部解放して……自由な世界を作る!」


 その言葉は、奴隷たちの心に深く刻まれた。

 絶望の中に芽生えた小さな希望――それは確かに、未来へと繋がっていく灯火だった。

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