第25話 光を穿つ拳
白銀の槍はなおも降り注ぎ、水路を裂き、壁を粉砕していた。
その中心で、紅と蒼と黒の輝きが渦を巻く。
「カイ……これで最後よ!」
「うん……一緒に!」
二人の声が重なった瞬間、暴走の力と呪いの刃がひとつに交わった。
紅の焔、蒼の光、そして黒の呪い。
三色の閃光が拳と剣に宿り、奔流となって押し返していく。
「うおおおおおおッ!!」
「はああああああッ!!」
カイの拳とアリシアの呪剣が同時に振り抜かれた。
紅と蒼と黒が融合した閃光が、白銀の《聖槍破陣》を正面から穿つ。
「――《解放連斬》ッ!!」
轟音が地下を揺らした。
白銀の槍が次々と砕け、眩い破片が雨のように降り注ぐ。
「バカな……!」
レオンハルトの瞳が驚愕に揺れる。
最後の槍すら粉砕され、静寂が訪れた。
カイは拳を握りしめ、勝利を確信した――その時。
「っ……!」
隣にいたアリシアが膝を折った。
「アリシア!?」
彼女の腕に刻まれた呪印が黒く焼け焦げ、皮膚が崩れ落ちていく。
血を吐き、震える体を支えられずに崩れた。
「大丈夫……。最後の一撃を支えるために……全部、使っちゃったみたい」
微笑みながらも、声は震えていた。
カイは必死に揺さぶる。
「嘘だろ! 立てよ! 一緒に自由になるんだろ!」
しかしアリシアは静かに首を振った。
その瞳には、確かな安堵と誇りが宿っていた。
「……あなたなら、きっと解放者になれる」




