第246話 覇帝の怒号
炎を纏った獅子の咆哮が轟き、覇帝ライナーの黄金の鎧に深々と亀裂を刻んだ。
獣人とドワーフの兵たちが歓声を上げ、勝利を掴みかけたかに思えた。
しかし――。
「……なるほど、面白い」
ライナーが低く呟き、次の瞬間、全身から放たれる威圧が戦場を覆った。
「小虫ごときに、覇の鎧を傷つけられたのは初めてだ……だがなぁぁッ!!」
咆哮。
それは雷鳴の如く響き渡り、兵士たちの心臓を鷲掴みにした。
空が震え、大地が悲鳴を上げる。
「我こそ覇者ライナー! この世界に王も公も要らぬ! 覇の前にひれ伏せぇぇッ!!」
黄金の鎧が光を放ち、裂け目から溢れた赤い光が炎と雷を纏って渦を巻く。
「……やべぇ、あの気配は……!」
ライオネルが歯を食いしばり、大剣を構える。
「さっきまでとは桁が違ぇ……!」
「完全に本気を出しやがったな」
オルドが汗を拭い、戦鎚を強く握り込む。
「ここからは、一撃でも喰らやぁ死ぬぞ……!」
ライナーが拳を掲げた瞬間、平野全体に雷光が走った。
兵士たちの髪が逆立ち、空気が焼ける匂いが漂う。
「《覇帝雷炎撃》!!」
拳が振り下ろされ、炎と雷が混じった衝撃波が広範囲を薙ぎ払う。
大地が爆ぜ、兵士も獣も無差別に吹き飛ばされた。
「ぐあああッ!!」
獣人兵が血を吐き、ドワーフ兵が盾ごと弾き飛ばされる。
「クソッ……!」
ライオネルが身を挺して仲間を庇い、大剣で衝撃を受け止める。
「ぐぅぅぅ……重ぇ……!」
「ライオネル!」
オルドが駆け寄り、戦鎚を地に突き立てる。
土壁が隆起し、かろうじて二人を守った。
「はははははッ! 抗うほどに無様だな!」
ライナーの笑い声が雷鳴に重なり響き渡る。
「さぁ、次の拳で全てを終わらせてやろう!」
戦場は完全に覇帝の支配下にあった。
だが獅子と鍛冶師はなおも立ち上がり、その瞳に炎を宿していた。




