第243話 覇帝の反撃
炎と咆哮の奔流が収まった後、戦場には一瞬の静寂が訪れた。
帝国機甲重装部隊の盾は粉砕され、陣形も半壊している。
獣人軍とドワーフ軍は歓声を上げ、勝利を掴みかけたかのように思えた。
だが――。
「……なるほど。小虫にしては見事だったぞ」
砂煙の奥から、低く響く声が戦場を貫いた。
黄金の装甲に包まれた巨躯が、なおも揺るぎなく立っていた。
鎧には無数の亀裂が走っているものの、覇帝の瞳は怒りと狂喜に燃えている。
「覇の拳を退かせた……その無礼、許さんッ!!」
ライナーが咆哮し、拳を天へ掲げる。
黄金の装甲が脈動し、雷と炎と大地の力が同時に渦巻き始めた。
「――《覇帝天地崩滅》!!!」
拳が振り下ろされた瞬間、天地が裏返るような衝撃が走る。
大地は隆起して爆ぜ、無数の岩塊が宙を舞い、炎と雷が奔流となって広がった。
まるで世界そのものが崩壊するかのような暴威だった。
「ぐっ……うおおおッ!!」
ライオネルが大剣を盾代わりにして踏みとどまるが、衝撃に押し流され、獅子兵が次々と倒れる。
「こいつ……この力は……!」
オルドが必死に戦鎚を突き立て、地を繋ぎ止める。
だが足元が割れ、兵たちが裂け目へと呑み込まれていく。
「見たか! これぞ覇帝の力!」
ライナーの声が雷鳴のように轟く。
「大地も空も、この拳の前にはひれ伏すのだ!!」
獣人とドワーフの軍勢は再び恐怖に包まれ、後退を余儀なくされる。
勝利の兆しは、一瞬で絶望へと覆い尽くされた。
「クソッ……!」
ライオネルは膝をつきながら大剣を支え、必死に立ち上がろうとする。
「まだ……負けてねぇ……!」
オルドも血に染まった腕で戦鎚を握りしめ、歯を食いしばる。
「ここで退いたら、全部終わりだ……!」
覇帝ライナーの反撃が始まった。
戦場は地獄へと変貌し、獅子と鍛冶師はその渦中でなおも抗う――。




