第241話 覇帝の本気
黄金の拳を押し返された皇帝ライナーは、一瞬だけ無言で立ち止まった。
周囲の帝国兵がざわめき、獣人とドワーフたちが勝利の歓声を上げる。
――だが、その空気を切り裂くように。
「……なるほど。小虫の分際で、覇者に一歩でも退かせたか」
ライナーの低い声が、戦場全体に響き渡った。
次の瞬間、彼の黄金の装甲が眩い光を放ち始める。
鎧の紋様が赤く脈動し、拳からは雷光と炎が同時に噴き出した。
「な、なんだあれ……!?」
ドワーフ兵が後退し、獣人たちが目を剥く。
「覇帝の本気……か」
オルドが唸り、戦鎚を握る手に汗をにじませた。
「まるで大地と空の力を拳に宿してやがる……!」
「吼えろォォォッ!!!」
ライナーが咆哮し、拳を振り下ろす。
――《覇帝轟砕・真打》!!
大地が爆発し、巨大なクレーターが生まれる。
衝撃波は平野全体を覆い、数百の兵士が吹き飛ばされた。
砂煙の中で岩が宙を舞い、炎と稲妻が混じり合って暴れ狂う。
「ぐぅっ……!」
ライオネルが大剣を構えて衝撃を受け止めたが、膝をつきかける。
「クソッ……あの力、さっきとは比べ物にならねぇ……!」
「まだだ! 踏ん張れ!」
オルドが戦鎚を地面に突き立て、盾代わりに衝撃を受け止める。
炎と雷が走り、鎚の柄が焦げ付いた。
「見たか! これが覇者の拳! 鉄壁にして嵐、大地をも従える絶対の力!」
ライナーの声は勝ち誇る咆哮。
「お前たちの咆哮も槌音も、覇の前にはただの雑音だ!」
ライオネルは歯を食いしばり、立ち上がる。
「雑音だと……? なら聞かせてやる! 獅子の咆哮は、覇者の耳をぶっ壊す音だ!」
オルドも笑い、戦鎚を担ぎ直した。
「覇帝だろうが何だろうが、鉄は砕けるんだよ! 俺たちの力でな!」
覇帝の本気が放たれた今、戦場はさらなる修羅場と化す。
だが獅子と鍛冶師は退かず、むしろ炎に飛び込むように前進していった。




