第24話 命を削る誓い
白銀の槍が迫り、世界そのものが砕けるかのような光が地下を覆っていた。
紅と蒼の光は必死に抗うが、圧倒的な白銀に呑まれ、かき消されようとしている。
「……ぐ……っ!」
カイの小さな拳は血を流し、骨が軋み、皮膚は裂けていた。
だが、それでも力を込める。
「オレは……まだ……足りないのか……! だったら……!」
胸の魔法陣が脈動し、紅と蒼の輝きがさらに激しく瞬く。
背から広がった幻の翼が裂け、鱗が浮かび、異形の気配が膨れ上がった。
「――もっと……もっと力を……!」
その瞳は人の色を失い、怪物の光に染まりかけていた。
「カイ、やめなさいッ!」
アリシアの叫びが響く。
彼女の呪印は黒ずみ、吐血で唇が赤く濡れていた。
それでも、必死に少年の腕を掴む。
「その力は……あなたの命を削る! ここで使えば、本当に壊れてしまう……!」
「でも……! オレが止まれば、みんな死ぬんだ!」
カイの叫びは幼く、必死で、震えていた。
「ええ……だから、私が一緒に背負う」
アリシアの声は震えていたが、瞳は真っ直ぐだった。
「あなたが一人で壊れるくらいなら……私の命を重ねなさい。
この呪われた命は、そのためにある……!」
アリシアの呪剣が赤黒く輝き、カイの暴走する光と共鳴する。
紅と蒼と黒が絡み合い、光の奔流に抗う力を増した。
「アリシア……!」
カイの胸に、熱い何かが突き刺さった。
その瞬間、暴走しかけた力がわずかに収まり、拳の輝きが安定する。
白銀の槍はまだ圧倒的だが――抗うための一筋の道が開けた。
「オレは……一人じゃない。だから……この力を、絶対に負けないために使うッ!」
その叫びが、地下を震わせた。




