第234話 解放と共存の旗
連邦旧議事堂の広間に、ざわめきが波のように広がっていた。
それは恐れではなく、鼓動が高鳴る音。種族の壁を越え、同じ戦場へ向かうと誓う声。
カイは深呼吸し、ゆっくりと両手を掲げた。
仲間たちと共に縫い合わせた旗――それは森の緑、海の蒼、炎の赤、風の白、そして奴隷たちの鎖を断ち切った黒の布。
それぞれの色が交差し、ひとつの大旗となって翻った。
「これは俺たちの証だ!」
カイの声が響き渡る。
「人間も、異種族も、奴隷も、貴族も――関係ねぇ!
俺たちは生きるために、生きたいと願うために、この旗を掲げる!
解放のために! 共存のために!!」
その叫びに、仲間たちが次々と立ち上がる。
「任せろ!」
ライオネルが吼え、大剣を掲げる。
「俺が前に立ち、道を切り拓く! どんな軍勢だろうが獅子の咆哮で吹き飛ばしてやる!」
「鉄は嘘をつかねぇ!」
オルドが戦鎚を床に叩きつけ、地鳴りを響かせる。
「砦を築き、武具を鍛え、この拳で未来を守る!」
「やっほー! 空からだって援護するよ!」
ミラが翼を広げ、軽快に笑う。
「空の仲間はアタシに任せな! 竜巻でも雷でも呼んでやる!」
「……黙りなさい」
フィオナは冷たい声で静かに言い放ち、森羅の杖を掲げた。
「私の魔法は、すべてを護り、すべてを断つ。希望を消そうとするなら――私が消し去る」
その厳しさに、しかし同時に温もりを感じる視線が仲間に向けられていた。
「歌で、皆を守る」
セレナが胸に手を当て、歌声を響かせる。
「希望の旋律は消えない。鎖で縛られても、恐怖で沈められても――歌は必ず生き続ける」
「……あぁ」
ルカは短く頷き、双鉈を抜いた。
「私の刃は迷わない。お前たちを護るために、そして――未来を繋ぐために」
最後にエステルが立ち、皮肉を混ぜた笑みを浮かべる。
「皮肉じゃないわよ、事実よ。
この旗は、法でも金でも縛れない“真実”を映してる。
人間が作った鎖は、私が断ち切ってみせる」
広間を埋める民衆が一斉に拳を掲げた。
獣人の咆哮、エルフの歌声、ドワーフの太鼓、人魚の合唱、翼人の羽ばたき――すべてがひとつの響きとなって天井を震わせる。
カイはその中心で、改めて旗を掲げた。
「行くぞ! この旗を掲げて、大陸を解放する!」
歓声が爆発し、鼓動が戦の序曲へと変わっていった。




