第22話 聖槍破陣
地下水路の空気が張り詰めた。
光の槍が何十本も浮かび上がり、レオンハルトの周囲に円陣を描いていた。
白銀の光は穢れを許さず、まるで神の裁きを下す儀式のように荘厳だった。
「……これ以上の言葉は不要だ。ここで終われ」
団長の声が低く響く。
「放て――《聖槍破陣》ッ!」
轟音と共に、無数の光槍が一斉に放たれた。
閃光が水路を埋め尽くし、壁も床も穿ち抜ける。
鉄鎧を着た兵士ですら巻き込まれ、無残に吹き飛ばされた。
「カイ!」
アリシアが呪剣を掲げ、赤黒い壁を展開する。
「――《血契呪剣》!」
血の障壁が光槍を受け止める。だが一本、二本、十本と貫かれ、アリシアの体に傷が走った。
「ぐっ……あああッ!」
血が飛び散り、鎖に繋がれた腕が震える。
「アリシアッ!」
カイが叫び、前に躍り出た。
「うおおおおおッ!」
暴走の力を拳に込め、光槍を打ち砕く。
紅と蒼の光が爆ぜ、いくつかの槍は弾き返された。
だが――。
「……足りぬ」
レオンハルトの冷徹な声が響く。
次の瞬間、より巨大な一本の槍が形成された。
白銀の光は濁りなく、ただ一つの存在を貫くためだけに生まれた刃だった。
「これが本当の裁きだ」
レオンハルトが槍を振り下ろす。
カイとアリシアは咄嗟に並び立ち、同時に叫んだ。
「――《暴走解放》!」
「――《血契呪剣》!」
紅と蒼、そして黒の斬撃が白銀の槍と正面衝突する。
轟音が響き、水路全体が揺れ動いた。
だが、押されている。
光はなお強く、二人を飲み込まんとしていた。




