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第212話 絶望の渦

 光の剣が乱舞し、黒金の拳が嵐のように振るわれる。

 最高裁判を名乗るメルティナの力は、もはや人の領域を超えていた。


「ぐああッ!」

 ライオネルが防御の大剣ごと吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。


「ライオネル!」

 フィオナが駆け寄ろうとするが、光剣の雨に阻まれた。

「こんな……数が途切れないなんて!」


「ハァッ……ハァッ……!」

 ミラの矢が次々と撃ち落とされ、羽根は切り裂かれ血に染まる。


「セレナの歌が届かない……!」

 セレナ自身も声を張り続けているが、音は黒金の闘気にかき消されていた。


「ふふ……見える? これが現実よ」

 メルティナが光剣を両手で操り、十字の斬撃を放つ。


 オルドが戦鎚で受け止めるも、足元の床が砕け、膝をつく。

「くっ……この重圧、まるで鍛冶炉ごと押し潰されるようだ……!」


「みんな……!」

 カイは拳を握りしめ、必死に仲間の背を守る。

 だが拳を振るうたび、光剣に押され、黒金の蹴りに吹き飛ばされる。


「まだ抗うの?」

 メルティナの声が響く。

「理想は所詮、夢想にすぎない。現実は、こうしてお前たちを踏み潰す!」


 仲間たちは次々と倒れ伏し、立ち上がるのもやっとの状態。

 民衆も震え、希望の炎が揺らぎかけていた。


「……ダメなのか……」

 カイの胸に一瞬、絶望が広がる。

 だが――すぐに脳裏をよぎった。


 これまで救った仲間たちの声。

 アリシアの笑顔。

 そして、あの日誓った「誰も死なせない」という約束。


 カイは血に濡れた拳を見つめ、唇を噛んだ。


「……いや、まだだ」

 小さく呟き、瞳に炎を宿す。


「勝つ方法は……ある」


 絶望の渦に呑まれながらも、カイは秘策の光を見つけた。

 その視線は、まっすぐメルティナを捉えていた。

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