第21話 白銀の団長
地下水路の闇に、白銀の光が差し込んだ。
松明に照らされた鎧は鈍く輝き、整然とした足音が響く。
その先頭に立つのは、白銀騎士団長――レオンハルト・グレス。
「……子供に、女か」
低く響く声。
だがその眼差しは、憐憫も侮蔑もなく、ただ冷徹な裁きだけを宿していた。
「ヴァイス侯を討った罪、奴隷を解き放った叛逆。
――汝らに与えられるのは、ただひとつ。死だ」
その言葉と同時に、背後の騎士たちが一斉に槍を構えた。
水路に反射する銀光は、壁を切り裂く刃のようだった。
「カイ、下がって……!」
アリシアが前に出る。血に濡れた腕で短剣を構え、呪印を輝かせる。
「――《血契呪剣》!」
赤黒い斬撃が放たれ、水路を塞ぐ兵士をまとめて薙ぎ払った。
だが、その斬撃はレオンハルトの前に届く前に掻き消えた。
「……!」
アリシアの目が見開かれる。
レオンハルトの周囲に光の槍が浮かび上がっていた。
十本、二十本、数え切れぬほどの白銀の矢が空間に整列し、静かに彼を守る。
「これが……《聖槍破陣》……!」
アリシアの声が震える。
圧倒的な光の陣形が展開される中、カイは前へ踏み出した。
拳を握り、紅と蒼の瞳を燃やす。
「……オレは、絶対に負けない!」
その叫びに応えるように水路の空気が張り詰め、、光の槍が一斉に震えた。




