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第205話 債魂変生

 民衆の歓声がまだ鳴り響く中、法廷の中央に立つメルティナは、不気味なほど静かに微笑んでいた。

 敗北を受け入れるでもなく、ただ冷徹な瞳でカイたちを見据えている。


「……勘違いしないでほしいわ」

 メルティナは唇を吊り上げる。

「私は“力でねじ伏せる野蛮なやり方”が嫌いなだけ。

 非力だったことは、一度もないのよ」


 その声が響いた瞬間、彼女は指を鳴らした。


 光の閃光が迸り、メルティナの白銀の裁判衣装が破れるように消え去る。

 代わりに現れたのは、黒と黄金に彩られた露出の多い武道家の装束。

 しなやかな四肢を包むのは、黒黄金に輝くガントレットとソルレット。


 その姿は、冷徹な法廷の支配者ではなく――戦場の女武道家そのものだった。


「これは……!」

 フィオナが目を見開く。


「見ろよ、あの武装……まるで鎖を力に変えてるみてぇだ!」

 ライオネルが唸る。


 メルティナはゆっくりと両手を構え、笑った。


「《債魂変生デットソウル・リフォージ》――」


 黒金の鎖が彼女の身体を駆け巡り、砕けたはずの《無限債牢》の残滓が吸い込まれていく。

 過去に徴収した魔力、奪い取った力、全ての怨嗟が黒金の光へと昇華された。


 その圧力は法廷を震わせ、傍聴席の人々までも息を呑む。

 黒金のオーラが吹き荒れ、柱に亀裂が走るほどだった。


「今まで奪ったすべての力……それを私自身の肉体へ還元する」

 メルティナの瞳が妖しく輝く。

「これが、私の“法の拳”よ」


「……やべぇな」

 ライオネルがごくりと唾を飲む。

「こいつ、本気を出しやがった」


「数え切れないほどの命から奪った力……」

 ルカが静かに構える。

「人ひとりが抱えていい規模じゃない」


 メルティナは踊るように軽やかにステップを踏み、カイを見据えた。

 武道家の気迫と、議長の冷徹な理性が融合した圧倒的な存在感。


「さぁ――第二幕を始めましょうか」

 魅惑的な笑みを浮かべながら、彼女は黒金の拳を鳴らした。

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