第201話 議長の切り札
仲間たちの反証と民衆の声援で、法廷の空気は完全に傾いていた。
数字よりも、証言よりも、いま確かに「人の心」が力を持ちはじめている。
「……なるほど。少しは楽しませてくれるわね」
メルティナは冷徹な笑みを浮かべ、金色の書板を高く掲げた。
「だが、私がこの座にいるのは伊達ではない。
――ここからが“真の裁判”よ」
契約魔法陣が再び光を放ち、今度は漆黒の紋様が広間を覆った。
「来た……!」
エステルが顔を険しくする。
「これは……議会記録にすら載らない禁呪……!」
メルティナの声が響き渡る。
「《無限債牢》――!」
漆黒の鎖が奔流のように溢れ出し、仲間たちへと絡みついた。
「うっ……魔力が……!」
フィオナが杖を握り締め、膝をつく。
「私の魔力が……“借金”として奪われていく……!」
「なんだこれ……力が吸われて……!」
ミラの羽が震え、弓を持つ手から力が抜け落ちる。
「ふん、法で装った吸血鬼みてぇな真似だな」
ライオネルが踏みとどまるが、剣を持つ腕は重く沈んでいく。
「見ての通りよ」
メルティナの目は冷たい。
「あなたたちの力は“借り物”に過ぎない。法の名の下に“債務”として徴収する――それが《無限債牢》」
「くっ……!」
セレナの竪琴の音色も掠れ、歌声が途切れる。
「もう終わりね」
メルティナが冷酷に宣言する。
「民衆も理解したでしょう。あなたたちは“力を返せない負債者”。
法に従い、ここで処刑されるべきなのよ」
「……負債?」
カイの瞳に蒼紅の光が宿る。
「俺たちの力は借り物なんかじゃない。みんなと積み重ねた、命と希望だ!」
その拳に光が集まり、鎖を押し返す。
「《混血顕現――二重解放》!」
蒼紅のオーラが噴き上がり、鎖を引き裂く音が広間に響き渡った。
「……まだ抗うのね」
メルティナの顔から笑みが消えた。




