第200話 反証
法廷を覆う契約魔法陣は、金色の鎖となって仲間たちを縛り付けていた。
観客の民衆は息を呑み、その光景を見守る。
「数字は嘘をつかない」
メルティナが冷ややかに告げる。
「あなたたちの証言は矛盾に満ちている。さあ――この場で“罪”を認めなさい」
「誰が認めるかよ!」
ライオネルが吠えるが、鎖が食い込み苦悶の声を上げる。
「……ふふ、いいことを教えてあげる」
エステルが静かに口を開いた。
鎖に縛られながらも、その瞳は冷静だった。
「この契約呪術――《法典拘束》は確かに強力。
けれど、法の基本を忘れてるわね」
「何?」
メルティナが目を細める。
「“法に基づかない契約は無効”」
エステルは皮肉げに微笑む。
「議長権限で強制した拘束は、本来ならば“契約”とは呼べない。
つまり――抜け穴がある」
「証拠はどこにある?」
メルティナが挑発的に言い放つ。
「ここにあるわ!」
フィオナが杖を掲げ、封じられた声を振り絞る。
「先ほど公開された帳簿、その中に“無効な契約条項”が山ほど記されている!」
「数字が、今度はあなたを縛るわ」
セレナが竪琴を爪弾き、声を重ねる。
歌声が魔力を乗せ、法廷に共鳴する。
「ぐっ……!」
メルティナの鎖が一瞬軋む。
「《双牙連弾》!」
エステルが短銃を抜き、魔力弾を鎖に撃ち込む。
法の紋章にひびが走り、拘束が次々と解けていった。
「今だ、カイ!」
ライオネルが解き放たれた瞬間に剣を構える。
「あぁ!」
カイの蒼紅の光が爆ぜ、残る鎖を粉砕する。
「証言が偽りだと言うなら、俺たちが救った命をもう一度見ろ!」
カイが叫ぶと同時に、傍聴席から再び人々が立ち上がった。
「彼らがいたから、今の俺がいる!」
「数字じゃ計れない真実がここにある!」
民衆の声が渦を巻き、法廷そのものを揺るがした。
エステルは冷ややかに、しかし確信を持って言い放つ。
「これが反証よ、メルティナ。
数字と法を操るつもりなら、その矛盾で自滅するわ」
メルティナの顔から余裕が消えた。
次なる一手を打とうとしたその瞬間――。




