第196話 連邦裁判所への召喚
帳簿公開からわずか数日――ローデン連邦はかつてないほどの混乱に包まれていた。
市場は荒れ、商人たちは取引を止め、広場では「奴隷制度を廃止せよ!」と叫ぶ民衆の声が響き渡る。
「……やったな」
ライオネルが拳を鳴らす。
「これで議会も黙ってられねぇだろ」
「えぇ。でも……次に来るのはもっと厄介な舞台よ」
エステルが冷ややかに答える。
その予言はすぐに現実となった。
連邦の使者が宿を訪れ、厳かに羊皮紙を差し出した。
「異端の旅人たちよ――連邦議会の命により、正式に“公開裁判”へ召喚する」
その場にいた全員が息を呑む。
「公開裁判……!」
フィオナが眉をひそめる。
「つまり、私たちが“法廷の場”に立たされるということね」
「連邦のやり方だな」
ルカが低く言う。
「正義を決めるのは剣ではなく、“言葉と契約”だ」
「要するに、俺たちを“罪人”に仕立て上げて民衆を黙らせたいんだろ」
ライオネルが吐き捨てる。
「そう。法廷はただの舞台……民衆に見せる芝居よ」
エステルが目を細める。
「でも逆に言えば、そこが最大のチャンス。証拠を突きつけて、議長を揺さぶる」
カイは拳を握りしめ、使者の羊皮紙を受け取った。
「……分かった。行こう。
俺たちの戦いが間違ってないってことを、民衆の前で証明する」
その夜、仲間たちは裁判所へ向けて準備を整えた。
フィオナは証拠書類を整理し、セレナは民衆を励ます歌を用意する。
オルドは護衛の戦鎚を磨き、ライオネルは刀剣を研ぎ澄ませた。
ミラは「派手に目立っちゃおうよ!」と軽口を叩き、緊張をほぐそうとする。
そして翌朝。
白亜の大理石で築かれた連邦裁判所の門前には、既に無数の民衆が集まっていた。
その中央に立つ議長、メルティナ・ローデンが冷ややかに告げる。
「ようこそ、被告人たち。
――数字は嘘をつかない。今日、あなたたちの正義が“法”に耐えられるか見せてもらいましょう」




