第195話 帳簿公開の衝撃
翌朝、ローデン連邦の中央広場。
市場の鐘が鳴り響く中、カイたちは人々が集まる壇上に立っていた。
その手には、昨夜命がけで奪った裏銀行の帳簿が握られている。
「みんな、聞いてくれ!」
カイの声が広場に響く。
人々がざわめき、足を止める。商人、労働者、奴隷たちまでもが視線を向けてきた。
「これは……裏銀行の記録だ!」
カイが高々と帳簿を掲げると、群衆がどよめいた。
「見ろ!」
エステルが一歩前に出て、冷ややかな声で続けた。
「奴隷の売買額、裏金の動き、議会への賄賂――すべてがここに記されている!
これが“自由と平等”を謳う連邦の実態よ!」
広場に広げられた羊皮紙に、人々の目が釘付けになる。
その数字の列は、あまりにも生々しく、誰もが否定できない真実だった。
「な、なんだと……!」
「俺の税金が議員の贅沢に!?」
「奴隷を……法で守っていたのか!?」
人々の怒声が渦巻く。
混乱ではなく、怒り。
これまで押し殺されていた感情が一気に爆発していった。
「法は嘘をつかない」
エステルが冷ややかに言い放つ。
「数字は真実を暴く。議会は民を欺き、己の腹を肥やしていた。
――これが連邦の“正義”なのよ!」
その言葉に群衆はさらに沸き立ち、拳を掲げる者、涙を流す者まで現れた。
壇上の後方では仲間たちがそれぞれ構えていた。
ライオネルは剣を握り、「民の怒りが刃になる」と呟く。
フィオナは魔法陣を展開し、もしもの襲撃に備える。
セレナの歌声は広場を包み、動揺する心をひとつに束ねていた。
「……これで、目は覚めたな」
カイは広場を見渡し、拳を握った。
「法に縛られてるんじゃない。法を作るのは――人だ!」
その叫びに、群衆がどっと湧き上がった。
声が広がり、街中を揺るがすほどの怒号となって響く。
だが同時に、その光景を冷ややかに見つめる影もあった。
議事堂の高台から、議長メルティナ・ローデンが優雅に立ち尽くしていたのだ。
「……なるほど。確かに“紙の戦争”を仕掛けてきたわけね」
その唇に、薄い笑みが浮かぶ。
「面白い。ならば次は――私の法廷で裁いてあげる」




