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第19話 追撃者の影

週末なので、時間差で少し多めに投稿します。

気長にお待ちください。

 冷たい水音が響く地下水路。

 奴隷たちは壁際に身を寄せ、震える体を寄せ合っていた。

 泣き声は押し殺され、ただ重苦しい空気が漂う。


 カイは壁に背を預けながら、拳を見つめていた。

 紅と蒼に光るその瞳は、まだ戦いの余熱に揺らいでいる。


「……オレは、もっと強くならなきゃ」

 小さな声が、水音に吸い込まれた。


「カイ」

 隣で鎖に繋がれたままのアリシアが、疲れた微笑みを浮かべる。

「強くなることだけが全てじゃないわ。あなたは……仲間を守るためにここにいる。それを忘れないで」


 カイは黙って頷いた。

 だが、その幼い胸に灯った誓いは揺るがなかった。


 ――同じ頃、地上。


 王国から派遣された白銀騎士団の一隊が、侯爵の屋敷跡に到着していた。

 燃え盛る瓦礫の中、焦げた匂いと共に残るのは、異形の力の痕跡。


「……炎の牢獄が破られたか」

 白銀の鎧を纏った男が、燃え残る鉄片を拾い上げた。

 髭を蓄えた顔に、冷徹な光が宿る。


「団長、これは――」

 副官が問うと、男は静かに剣を抜いた。


「討伐対象は二つ。

 一つは、侯爵を討った混血の子。

 もう一つは、共に逃げた魔人族の女。

 ……両者とも、生かしてはおけぬ」


 白銀の刃が月明かりを反射し、鋭く光る。


「準備しろ。奴隷解放など、王国にとっては叛逆の証。必ず首を挙げるぞ」


 その声は冷ややかで、決して感情を揺らさなかった。

 白銀騎士団の旗が翻り、闇夜に進軍を開始する。


 ――地上に蠢く影は、まだ地下に潜む二人を知らない。

 だがその足音は、確実に迫りつつあった。

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