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第189話 連邦議会の動揺

 ローデン連邦の議事堂――黄金の柱に支えられた巨大な円形ホール。

 そこに集った議員たちは、怒号と混乱に包まれていた。


「塩の価格が暴落だと!? どういうことだ!」

「倉庫の帳簿が改ざんされている! 裏銀行はどうなっているんだ!」

「商人ギルドからも不満が噴出しているぞ!」


 議員たちは次々に立ち上がり、互いに責任を押し付け合った。

 その中心に、白金の髪を優雅にまとめた女性が静かに座していた。


 ――連邦議長、メルティナ・ローデン。


「静粛に」

 軽やかにベルを鳴らすと、議員たちの喧噪が一気に収まった。


「数字は嘘をつかない。……この混乱が示しているのは、裏銀行の秩序が破られたという事実だけ」

 メルティナの声は冷ややかでありながら、不思議と耳を離させなかった。


「だが安心なさい。犯人はすぐに突き止められる。金貨の流れを追えば、必ずね」


「しかし、議長! 民衆の間では“議会が庶民を欺いている”との噂が――」


「ならばその噂を利用すればいい」

 メルティナは微笑んだ。

「騒ぎ立てる者を見せしめに裁き、公開の場で“法”の名を以て処刑する。

 そうすれば誰も逆らえなくなる」


 彼女の冷徹な言葉に、議員たちは戦慄した。


「……さて」

 メルティナは小さく呟き、机の上の羊皮紙に指を滑らせた。

 そこには市場操作の痕跡――そして「異端の旅人」の名が記されていた。


「面白い。剣や魔法でなく、“紙”で私に挑もうというのね」

 瞳に冷たい光を宿し、唇が皮肉に歪む。


「ならば歓迎しましょう――連邦の舞台へ」


 一方その頃、宿に戻ったカイたちもまた、噂が広がる速さに驚かされていた。


「こんなに一気に広まるのか……」

 カイが呟くと、エステルは満足げに頷いた。


「えぇ。連邦の力は“金と情報”よ。こちらの動きもすぐに議会に届く」


「つまり……向こうももう気付いてるってことだな」

 ライオネルが苦々しく言う。

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