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第185話 ルカが語る現実

夕暮れの連邦の街。

 市場の喧騒が収まり、店仕舞いを始める商人たちの声が響いていた。

 カイたちは宿の一室に集まり、昼間のエステルとのやり取りを振り返っていた。


「……なんだあの女」

 ライオネルが机を叩き、むすっと顔をしかめる。

「法だの罪だの、理屈ばっか並べやがって」


「でも、確かに彼女の言葉は現実的よ」

 フィオナが冷静に言う。

「この連邦では、法に背けばたとえ民衆を救っても罪人扱いになる。

 力だけでは突破できないわ」


「えぇー、堅苦しいのはやだなぁ」

 ミラは椅子に逆さまに座りながらぶーたれた。

「もっとシンプルにやっちゃえばいいのに」


 その時、部屋の隅で黙っていたルカが口を開いた。


「……お前たちはまだ知らない。この連邦がどれほど腐っているか」


 その声に全員が振り向く。

 ルカは大鉈を壁に立てかけ、腕を組んだまま続けた。


「表向きは“自由と商業の都市群”。だが実際は――金で全てが買われる。

 街の裁判所に行けば分かる。金を積んだ者は無罪、積めない者は死刑。

 奴隷契約は法で守られ、血を流して抗う者は即座に処刑台だ」


 彼女の言葉は重く、冷たい。

 それでも真実の響きを持っていた。


「じゃあ……」

 セレナが小さく声を上げる。

「この国では……歌っても祈っても、人は救われないの?」


「……救われるのは、金を持つ者だけだ」

 ルカの表情は険しかった。

「私の知る者も、金を払えなかったがために奪われ、裁かれ、消えた」


 静かな声に、皆は息を呑む。


「……ふざけんな」

 カイが拳を握り、低く呟いた。

「人を人とも思わない仕組みなんて……壊すしかない」


「お前の怒りは分かる」

 ルカが頷く。

「だが、ここでは力だけでは何も変わらん。

 エステルの言葉は癪に障るが……確かに正しい。

 法と金を理解しなければ、この国を揺るがすことはできない」


「じゃあ……どうすればいいの?」

 ミラが尋ねる。


 ルカは短く答えた。

「答えは一つ。“連邦の心臓”を狙え。金融、裁判、奴隷市場――その全てを牛耳る議長メルティナ・ローデン。

 あいつを引きずり下ろさなければ、この国は変わらない」

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