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第184話 エステルの試し

 広場に立つエステルは、杖のようにレイピアを地に突き立て、冷ややかに告げた。


「ここで少し、試させてもらうわ。あなたたちがどれほど“連邦で戦う覚悟”を持っているのかを」


 彼女の周囲に魔法陣が浮かび上がる。

 契約呪術の紋章が重なり合い、まるで法廷の裁きを再現するようだった。


「被告人――カイ」

 エステルが淡々と宣言する。

「あなたは奴隷制度を打ち砕き、多くの人間族を殺してきた。これは明らかに“殺人”の罪。どう弁明する?」


 突きつけられた言葉に、広場の空気が張り詰める。

 ミラが「ちょ、いきなり重すぎ!」と叫んだが、エステルは無視した。


「……俺は、守るために戦った。それが罪だと言うなら、俺は喜んで背負う」

 カイの目は揺らがなかった。


「強がりね。でも、法廷では“正義感”では通用しないわ」

 エステルが切り返す。


「次に、フィオナ」

 視線が向けられる。

「あなたは禁呪に近い精霊術を解き放ち、街ひとつを灰にしかけた。その危険性をどう正当化する?」


「……必要な時に必要な力を使っただけよ」

 フィオナが冷たく返す。

「それで誰かが救われたのなら、後悔はない」


「論理的に聞こえるけれど――法廷では、“危険人物”と烙印を押されるだけ」


「ライオネル。あなたは暴れすぎて建物を倒壊させたことがあるわね?」

「おいおい、細けぇこと気にすんな! 戦いに犠牲はつきものだろ!」

「つまり“自覚的に破壊行為を繰り返している”と認めるのね」

「ぐっ……!」


 次々と突きつけられる“罪”。

 仲間たちは言葉を失い、広場は重苦しい空気に包まれる。


 だが、その中でセレナが口を開いた。


「……あなたの言うことは分かる。けれど」

 彼女は静かに竪琴を抱え、柔らかく笑んだ。

「私たちは“紙の上の正義”じゃなくて、“目の前の命”を救ってきたの。

 それを罪と呼ぶなら――この歌で何度でも訴えるわ」


 エステルの瞳が一瞬だけ揺れた。

 だがすぐに皮肉な笑みを浮かべる。


「……なるほど。少しは見込みがあるようね」


 契約魔法陣が霧散し、広場に緊張が解けた。


「勘違いしないことね。私はあなたたちを認めたわけじゃない」

 エステルは踵を返す。

「連邦で戦うには“力”だけじゃ足りない。法を理解しなければ、必ず潰される。……そのことを覚えておくことね」


 その背中を見送りながら、カイは拳を握りしめた。

 新たな戦場が剣や魔法ではなく、“紙と法”の上にあることを痛感した瞬間だった。

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