第180話 歌と踊りと賭博の大混乱
翌日。
温泉で英気を養い、美食と美酒を楽しんだ一行は、街の繁華街を散策していた。
そこにはきらびやかな建物が立ち並び、歌や踊りの音に混じって、賭博場の掛け声が響いていた。
「おおお! あれが“天空カジノ”か!」
ライオネルの目が輝く。
「戦うだけじゃなく、運も試してこそ男ってもんだ!」
「バカね。確率の世界に運なんて存在しないわ」
フィオナが冷ややかに言い放つ。
「賭博は数学で管理されている。必ず胴元が勝つ仕組みよ」
「へぇ~じゃあ勝ったら私の勝ちってことね!」
ミラがにやりと笑い、勢いよくカジノの扉を開いた。
◆ サイコロ勝負
「出た目が大きい方が勝ち! さぁ張った張った!」
まずはシンプルなサイコロ勝負。
「ふふ、こんなの統計で勝てるわ」
フィオナが冷静にサイコロを振る――が、出たのは「1」。
「やっほー! アタシは6!」
ミラが飛び上がり、周囲の観客から歓声が上がる。
「なっ……!」
フィオナが悔しげに眉をひそめると、ミラは勝ち誇った顔で言った。
「ほらね、理屈より運! お堅いお姉さん、今日は完敗だね!」
「……黙りなさい」
◆ 歌勝負
「お次は歌の審査対決だぁ! 観客を沸かせた方が勝ち!」
「これは……私の出番ね」
セレナが竪琴を抱え、澄んだ声で歌い出す。
温泉街のざわめきが一瞬で止まり、観客がうっとりと耳を傾けた。
「はは、こりゃ相手が悪いな……」
カイが苦笑する。
ところが次に出てきた挑戦者は、派手な衣装の酔っ払い芸人。
「いぇ~い! みんなで歌えば勝ちだぁ~!」
と大合唱を始め、場が大盛り上がり。
審査員は迷わず酔っ払い芸人に軍配を上げた。
「……え?」
セレナが呆然とする。
「うわぁ~、ある意味理不尽!」
ミラが腹を抱えて転げ回る。
◆ 力比べ
「腕相撲勝負だ!」
ライオネルとオルドが同時に参加し、対戦台に乗る。
「負ける気がしねぇ!」
「俺もだ!」
二人は互いに全力で押し合った。
だが結果は――台ごと粉砕。
「お、おい、机壊れてんぞ!」
「ははは! 引き分けってことでいいだろ!」
会場は爆笑と拍手に包まれた。
◆ カイの幸運
「次はカードゲームだ!」
ルールがよく分からないまま座らされたカイ。
適当にカードを出すと――なぜか大当たり。
「おいおい、また勝ちやがった!」
「なんでだよ! ルール理解してねぇだろ!」
観客たちがざわつく中、ミラがにやにやしながら耳打ちする。
「カイってさぁ……無自覚で強運キャラだよね」
「いや、本当に分からなかったんだが……」
カイは頭をかいた。
◆ フィナーレ
勝ち負けに一喜一憂し、気付けば全員ほぼスッカラカン。
財布を覗いて青ざめていた時――。
「どん、どどんっ!」
あの太鼓の音が響いた。
「ま、まさか……!」
全員が振り返ると――やはりそこにいた。
「よぉ! 祭りと聞いたら来るしかねぇだろ!」
魚鱗族のハルドが、いつの間にか太鼓を抱えて登場した。
「お前……また現れたのか……!」
フィオナが額に手を当てる。
だが、ハルドが太鼓を鳴らし始めると、カジノ全体が即席の踊り会場へと変わった。
賭博場の客も従業員も一斉に踊り出し、笑いと歌声で街は大混乱。
こうして、天空温泉街での寄り道は、笑いと騒ぎと太鼓に包まれて幕を閉じた。
翌朝、全員が二日酔いと財布の軽さに呻くことになるのだが――それはまた別の話である。




