第176話 翼人評議会の依頼
翌朝、祝宴の余韻がまだ残る天空都市の大広間。
翼人評議会の長老たちが勢揃いし、カイたちを迎えていた。
昨夜まで強張っていた彼らの顔には、深い悔恨が刻まれていた。
「我らは掟に縋り、何も見ようとしなかった……」
評議会長が頭を垂れた。
「その過ちがヴォルテクスを生み、都市を嵐に沈めかけた。救ってくれたお前たちに、どれだけ感謝しても足りぬ」
「……掟に縛られた結果があれだ」
ライオネルが腕を組み、不機嫌そうに吐き捨てる。
「納得できねぇが、謝るだけじゃ済まされねぇぞ」
「……分かっている」
長老の声は震えていた。
「だからこそ、お前たちに正式な依頼をしたい」
「依頼……?」
フィオナが眉をひそめる。
「ヴォルテクスが最期に告げた言葉を覚えているか?」
オルドが腕を組み、深く頷いた。
「“公国に行っても無駄だ。死にたくなければ連邦に行け”……確かにそう言っていたな」
「……あいつの言葉を信じるのか?」
ミラが首を傾げる。
「空の暴君だよ? どう考えても罠っぽいじゃん」
「だが……一理ある」
フィオナが冷静に口を開いた。
「今の私たちでは装備も支援も不足している。公国の排斥主義に飛び込めば、仲間が命を落とす可能性は高い。
連邦は商業と技術の国。武具や補給を整えるなら、確かに最適な場所よ」
「それに……」
セレナが竪琴を抱きしめる。
「ヴォルテクスは狂気に囚われていたけれど、最後の言葉だけは……どこか“仲間を思いやる者”の響きがあった」
広間に沈黙が落ちた。
やがてカイが拳を握り、皆を見回した。
「……俺は決めた。
ヴォルテクスの過ちは繰り返さない。仲間を守るために、まずは力を整える。
――連邦に行こう」
その言葉に、仲間たちが頷いた。
ライオネルは「仕方ねぇな」と笑い、オルドは「酒と鍛冶が充実してるなら悪くねぇ」と鼻を鳴らす。
ミラは「やっほー! 連邦って美味しいご飯あるかな?」と軽口を叩き、セレナは静かに微笑んだ。
評議会長は深く頭を下げた。
「どうか、この空を救ってくれた勇者たちよ。次は、大地を歩む民たちに希望を……」




