第173話 嵐王の最期
青空を取り戻した天空都市に歓声が広がる中、突如として不穏な声が響いた。
「……フフ……まだ……負けていない……」
広場の隅、崩れた瓦礫の中からヴォルテクスが立ち上がっていた。
その身体は満身創痍で、雷翼も完全に砕け散っている。
それでも彼の瞳にはなお、王としての狂気と誇りが宿っていた。
「ヴォルテクス……!」
ライオネルが大剣を構え直し、フィオナも杖を握りしめる。
「待って!」
カイが片手をあげ、皆を制した。
ヴォルテクスは腕を組んだまま、口を開いた。
「……王は……倒れぬ……この意思を砕かれぬ限り……決してだ……」
掠れた声ながら、その響きは空全体に届くようだった。
そして、ふっと笑う。
「だが……ここまで俺を追い詰めた褒美だ……助言をしてやろう。
今のままでは……公国に行っても無駄だ……
足手まといの仲間が……死ぬだけだ……
死にたくなければ……連邦に行け……
少しは……ましな装備になるかもしれぬぞ……」
その言葉を残し、ヴォルテクスはゆっくりと目を閉じた。
最後まで腕を組み、王の姿勢を崩さぬまま。
そして――静かに絶命した。
誰も声を出せなかった。
彼が歩んだ道は間違っていた。
だが、その根底にあったのは掟に奪われた過去、復讐に囚われた悲しき魂だった。
「……ヴォルテクス……」
カイは低く呟いた。
「あなたもまた、この世界の鎖が生み出した犠牲者だったのかもしれない……」
青空の下で、嵐王は静かに眠った。
彼の死は、翼人族にとっても、そしてカイたちにとっても――忘れられない教訓となるのだった。




