第171話 終天解放撃
轟音が消えた。
嵐も雷も、ヴォルテクスが操っていた魔法は全て霧散し、静寂が訪れる。
「……終わったのか……?」
ライオネルが息を荒げながら呟いた、その瞬間――。
「ハァーハッハッハッ……!」
雷雲を裂く笑い声が響いた。
ヴォルテクスの肉体から黒雷が迸り、その輪郭が変貌していく。
「嵐を外に解き放つ必要などない……すべて、この身に宿せばいいのだァ!
《嵐王絶対顕現》!」
筋肉が膨れ上がり、翼は雷そのものとなり、瞳は狂気の稲光で燃え上がる。
まさに“空そのもの”が一つの肉体に凝縮されたかのようだった。
「うおおおッ!」
ヴォルテクスが突撃する。
拳の一撃で塔が砕け、蹴りで空橋が吹き飛び、翼を振るうたび雷鳴が都市を裂いた。
「数えきれねぇ……!」
オルドが呻く。
「連撃の嵐そのものじゃねぇか!」
その猛攻は止まらなかった。
一撃ごとに天候が荒れ狂い、雷雲が叫び、風が悲鳴を上げる。
空が怒り狂っているようにしか見えなかった。
「ぐっ……はぁっ……!」
カイは必死に拳と腕で受け続けた。
巨人の力で押さえ込み、魚鱗の防御で衝撃をいなし、翼の残光で踏みとどまる。
だが、反撃の拳は一度も振るえなかった。
「どうしたァ、小僧ッ!」
ヴォルテクスが狂気の笑みを浮かべる。
「これが絶対なる空の掟だ! 貴様では俺に届かん! この瞬間、俺の勝利は揺るがんのだァッ!」
勝利宣言が雷鳴に重なる。
仲間たちも思わず息を呑んだ――。
だが、異変に気づいたのはヴォルテクス自身だった。
「……なに……? 拳が……熱を帯びて……」
カイは一歩も退かず、無数の猛攻を受けながら拳を握りしめていた。
紅と蒼と白と金――四色の光が拳に収束している。
「俺は……お前を倒すために……全部、耐えてきたんだ……!」
「馬鹿な……!」
ヴォルテクスの瞳に初めて“恐怖”が宿った。
「これで終わりだ!!!!!
《終天解放撃》――ッ!!!!!!!!」
カイの拳が空を裂いた。
四色の光が流星のごとく尾を引き、雷雲も竜巻も飲み込み、天空都市全体を震わせるほどの衝撃が炸裂する。
ヴォルテクスの体が光に呑まれ、雷翼が砕け、空に散っていった。
狂気の笑い声はかき消え、残ったのは沈黙と――希望の光だけ。
「これが……俺たちの……未来だ……!」
カイの声が、都市のすべてに届いていた。




