第161話 反撃の兆し
轟音と共に、天空都市を支える浮遊石がさらに砕けていく。
塔が傾き、住民たちが悲鳴を上げてしがみつく。
ヴォルテクスの笑い声が雷鳴に混じり響いた。
「さあ、墜ちろォ! お前たちの掟ごと、大空から地へ叩き落としてやるッ!」
「……なら、これで食い止めるッ!」
カイが紅と蒼に輝く瞳を燃やし、拳を構えた。
「《混血顕現――二重解放》ッ!」
巨人の筋力と魚鱗の防御が爆発的に高まり、拳に炎のような光が宿る。
渾身の一撃が空へと突き上がり、瓦礫を吹き飛ばした。
だが――。
都市を覆う嵐の奔流はびくともせず、逆に拳を飲み込むように迫ってきた。
「ぐっ……止まらない……!?」
カイの体が震え、膝が沈む。
二重解放を発動してなお、嵐の圧力を押し返すことはできなかった。
「カイ!」
フィオナが杖を掲げ、冷徹な声を響かせる。
「無理よ、あなたひとりじゃ! ここは私たちで――!」
「風は任せて! アタシに任せな!」
ミラが短弓を構え、翼を大きく広げる。
「水の流れで支えるわ!」
セレナが竪琴を抱え、指先を走らせる。
「――三重奏で、嵐を止める!」
フィオナが言い放ち、魔法陣を展開する。
「《森羅裁断》!」
緑の葉が光の刃となり、瓦礫を切り裂いて進路を整える。
「《蒼潮交響詠》!」
セレナの歌声が水流を呼び、崩れかけた浮遊石を支えた。
「《疾風乱翔》!」
ミラの矢が風を裂き、竜巻の一部を相殺して暴風を逸らす。
三つの魔法が重なり合い、緑と蒼と白の光が大空で交響した。
嵐が裂かれ、崩壊の勢いがほんのわずかだが止まる。
「……やった……! これなら、一時的に持ちこたえられる!」
フィオナの声に、奴隷たちが安堵の息を漏らした。
「ハァーハッハッハ! 小娘どもが……!
だが面白い、どこまで持ちこたえられるか試してやろう!」
ヴォルテクスが翼を広げ、雷光を再び纏う。
その狂気の笑みを前にしても――カイは拳を握りしめ、仲間を見据えた。
「……俺はまだ倒れてない。みんなが繋いでくれた、この一瞬……必ず勝機に変えてみせる!」




