第160話 墜落寸前
轟音と共に、天空都市を支える巨大な浮遊石がひび割れていく。
足元が揺れ、空橋が次々と崩れ落ち、住民たちの悲鳴が空に散った。
「このままじゃ……都市そのものが墜ちる!」
フィオナが顔を上げ、杖を強く握りしめる。
「チッ、あの野郎……!」
ライオネルが歯を食いしばり、崩れ落ちる橋の上で市民を抱え飛び退いた。
「アタシがやる!」
ミラが翼を広げ、風を纏わせた矢を番える。
「これで吹き飛ばす――《疾風乱翔》ッ!」
竜巻のような矢雨がヴォルテクスに迫る。
だが――。
「ハッ! 子供だましが!」
ヴォルテクスの翼が雷光を放ち、矢を悉く吹き飛ばした。
反動で生じた風が逆に都市の塔をなぎ払い、瓦礫が雨のように降り注ぐ。
「ぐっ……!」
オルドが戦鎚で瓦礫を弾き飛ばし、仲間を庇う。
「こんなもん、いつまで持つか……!」
「セレナ、今だ!」
カイが叫ぶ。
「ええ……!」
セレナの竪琴が輝き、水流の膜が広がり、落下する市民を受け止めて空橋へ戻した。
だが状況は悪化する一方だった。
浮遊石がさらに砕け、都市全体が傾いていく。
「このままじゃ……都市ごと墜ちる……!」
フィオナの冷静な声に、誰も反論できなかった。
「ハァーハッハッハ! 良いぞ、その絶望が欲しかった!」
ヴォルテクスが雷光を纏い、空を支配するように両翼を広げる。
「抗え、足掻け! だが最後には、嵐に呑まれて墜ちろォ!」
狂気の笑い声が、崩壊していく都市全体を覆った。
仲間たちは互いに視線を交わした。
恐怖と絶望に押し潰されそうになりながらも――まだ諦めてはいなかった。
「絶対に……誰も落とさせない!」
カイが拳を震わせ、紅と蒼の光を宿す。
だが、その体はすでに限界に近づいていた。




