第152話 空市場の裏側
翌日。
カイたちは都市の中心部を離れ、ミラの案内で裏通りへと足を踏み入れていた。
石畳の広場や空橋の煌びやかさとは対照的に、そこは陰鬱な空気に包まれていた。
「……ここが“空市場”だよ」
ミラが羽をたたみ、小声で言う。
「表の市場じゃ掟に触れる物は全部禁止。だからこうして裏で売買されてるの」
路地に並ぶ露店。
積まれていたのは、盗品の武具、禁呪の巻物、そして――鎖につながれた翼人族の姿。
「奴隷まで……!」
セレナが目を覆い、竪琴を震わせる。
「掟を盾にして“穢れ”を切り捨て……その裏で売り買いしてるのか」
ライオネルが怒声を押し殺し、拳を握った。
「……空の民だからって清らかなんて幻想よ」
フィオナは冷ややかに言い放つ。
「結局、地上と同じ。欲望に抗えない」
その時、オルドがふと足を止めた。
「おい……あの紋章を見ろ」
露店の奥に積まれた木箱に、公国の印が刻まれていた。
金貨と兵糧袋――航空艦隊に納められるはずの物資。
「空賊と……公国が繋がってる?」
カイの瞳が紅と蒼に燃える。
背後で不意に笑い声がした。
「気づいちまったか、坊主」
現れたのは、片翼に黒い刺青を持つ翼人の男。
背後には粗野な武装集団――空賊たち。
「俺たち“空賊団”は、この市場の用心棒ってわけさ。
そして俺たちの頭目は――空賊王ヴォルテクス!」
名を告げられた瞬間、周囲の空気が一気に張り詰めた。




