第150話 翼人奴隷への冷遇
長い押し問答の末、カイたちは「監視付き」という条件で都市の門をくぐることを許された。
だが――街に一歩足を踏み入れた瞬間、無数の視線が突き刺さった。
白亜の塔と空橋が連なる美しい都市。
そこを歩く翼人族の市民たちが、カイたちと解放された奴隷に目を止める。
そして、あからさまに顔をしかめた。
「見ろよ、首輪の痕が残ってる……」
「汚らわしい……どうして聖域に入れた?」
「掟を破った連中が、同じ空を歩くなんて」
ひそひそと交わされる声は冷たく、子供でさえも翼を背に隠して怯える。
翼人奴隷たちは肩をすくめ、視線を落とした。
「な……なんなんだ、これは……!」
ライオネルが怒りに震え、大剣の柄に手をかける。
「やめて。ここで騒いでも逆効果よ」
フィオナが冷静に制し、しかしその声にも硬さがあった。
「同胞じゃないのか……?」
カイが呟くと、隣で翼を縮めた少女が答えた。
「同胞だからこそ……掟を破った者は“穢れ”とされるの」
「……ふざけてる」
カイの拳が震える。
「アタシも知ってたよ」
ミラが軽い調子で笑うが、その瞳は曇っていた。
「でも……目の前で聞くと、やっぱり腹立つね」
「アタシに任せな!」と明るく振る舞おうとする彼女の声は、今までで一番弱々しかった。
セレナが竪琴を抱きしめ、囁くように言った。
「こんな冷たい街に……本当に翼人族の未来があるのかしら」
「未来は掟じゃなく、選ぶものだ」
カイが顔を上げる。
「だったら、俺たちが掟を壊す」
その言葉に、ミラは驚き――そして、ほんの少し笑った。
天空都市の冷遇。
それは「鎖は空にも存在する」という事実を、仲間たちに突き付けるものだった。




