第149話 天空都市の門前
浮遊山脈を越えた先――そこに広がっていたのは、雲海を突き抜けるように築かれた白亜の都市だった。
空に浮かぶ塔、翼を持つ者たちが自由に飛び交う街並み。
それはまさしく「天空都市」の名にふさわしい光景だった。
「すごい……まるで神話の世界ね」
セレナが竪琴を抱え、思わず息を呑む。
「これが……翼人族の故郷」
ミラの瞳も輝いていた。だがその奥に、不安の影が宿っているのをカイは見逃さなかった。
都市の巨大な門前に降り立つと、すぐに槍を構えた衛兵が現れた。
鋭い眼差しでカイたちを見下ろし、声を張る。
「止まれ! ここは翼人族の聖域だ。地上の者の立ち入りは許されない!」
「待ってくれ! この人たちは解放した同胞だ!」
ミラが翼人奴隷たちを示し、一歩前に出る。
「同胞……?」
衛兵の目が鎖の痕を留めた翼人たちに注がれた。
だが次の瞬間、その目は侮蔑に染まる。
「奴隷になった者は穢れだ。掟に従えば、都市に入れる資格はない」
「なっ……! 何を言ってる!」
ライオネルが怒声を上げる。
「同じ翼人族だろうが! どうしてそんな扱いを!」
「掟は絶対だ。お前たち外の血を混じらせた者も同罪。
去れ。さもなくば――排斥する」
冷たく告げられた言葉に、翼人奴隷たちは肩を震わせた。
故郷に戻っても拒絶される。その残酷な現実に、誰もが声を失った。
「……やっぱりね」
ミラが小さく笑い、しかしその声は震えていた。
「アタシが戻る場所なんて、最初からなかったんだ」
カイは一歩踏み出し、衛兵を真っ直ぐ見据えた。
「なら俺たちが掟を壊す。翼を持つ者を縛る鎖なんて、ここでも断ち切る」
「カイ……」
フィオナが横目で彼を見つめ、頬を緩める。
衛兵たちは槍を構え、無言で立ち塞がった。
天空都市の冷たい門前に、緊張が走る。




