第143話 草原に降る影
砂漠を抜けた先に広がっていたのは、見渡す限りの緑だった。
風に揺れる草原は、乾いた大地に慣れきった仲間たちの目に眩しく映る。
「ふぅ……やっと砂と熱風から解放されたな」
ライオネルが大剣を肩に担ぎ、大きく伸びをする。
「空気が澄んでる……水脈も近いはずだわ」
フィオナは風に耳を澄ませ、冷静に呟いた。
「休憩にぴったりじゃないか」
オルドが豪快に笑い、荷物を下ろした。
仲間たちがほっと息をついた、その時だった。
――影。
空を覆う巨大な黒い影が、草原を一瞬で暗くした。
カイが反射的に顔を上げると、そこには翼を広げたような巨艦が浮かんでいた。
「な……なんだ、あれ……!」
セレナが竪琴を抱きしめ、声を震わせる。
「空に……船が……?」
フィオナの瞳が険しくなる。
次の瞬間、空から無数の兵士が降ってきた。
鎖付きのロープにぶら下がり、草原へと着地する公国の兵士たち。
槍を構え、一糸乱れぬ隊列を組む。
「公国の……航空艦隊か!」
オルドが歯ぎしりし、戦鎚を構える。
「へっ、空から降ってきたって倒すだけだ!」
ライオネルが笑い、カイの隣に立つ。
カイは拳を握りしめ、紅と蒼の瞳を光らせた。
「……奴らが奴隷を運んでる可能性もある。なら――」
「助けるしかない!」
セレナの声に全員が頷く。
草原に風が吹き抜ける。
空から舞い降りる兵士たちを前に、カイたちは武器を構えた。




