第139話 砂漠都市どたばた日和
解放の祝宴から一夜明け――。
砂漠都市の広場は、まだ酔いと興奮の余韻でざわめいていた。
「ん……頭いてぇ……」
カイが目を覚ますと、横には空の杯と肉の骨が散乱していた。
「おはよう、カイ」
フィオナが冷ややかに見下ろす。
「昨夜は見事に酔い潰れていたわね。砂の上で寝るなんて、犬以下よ」
「い、犬以下って言うな!」
「ガハハ! 弟は酒に弱ぇな!」
ライオネルが豪快に笑い、肩を叩く。
「俺なんざ、まだあと十杯は行けたぞ!」
「……お前は獅子の胃袋でも持ってんのか」
カイはげんなりと呟く。
「獅子の胃袋に魚の鼓動を加えれば、最強だな」
オルドが横から割り込み、妙に真面目な顔で頷く。
「誰もそんな合成生物の話はしてねぇ!」
全員が一斉にツッコんだ。
その時、ドォン! と大音響が響いた。
「おおっ、朝から元気じゃねぇか!」
ハルドが巨大な太鼓を叩きながら登場。
「俺は今日も打つぞ! 太鼓は命のリズムだ!」
「やめて! 頭に響くから!」
カイと数人の奴隷解放者が一斉に頭を抱える。
「ハルド、せめて朝は控えめにしてほしいわ」
フィオナが冷ややかに指摘する。
「ふん、太鼓に控えめはねぇ!」
再びドドン! と打ち鳴らされ、全員がよろめいた。
「……仕方ないわね。少しは静かにさせるわ」
フィオナが杖を掲げる。
「《静音結界》」
次の瞬間、太鼓を叩いても「ぽふっ」と間抜けな音しかしなくなった。
「おい! 俺の太鼓が……!?」
ハルドはショックで膝をついた。
「くっ……ぽふっ……これはこれで笑えるな……!」
ライオネルが腹を抱えて転げ回る。
一方その頃――。
セレナは市場で果物を抱えて戻ってきた。
「みんなで食べましょう!」
笑顔で差し出されたのは、砂漠名物の巨大スイカ。
「よし! ここは俺に任せろ!」
ライオネルが大剣を振りかざす。
「やめろ! 粉々になるだろ!」
カイが慌てて止める。
「なら俺だ」
オルドが戦鎚を構える。
「もっとダメだろ!」
結局、フィオナが魔法でスマートに切り分け、みんなで食べることになった。
「……こうして笑えるのは、悪くないな」
フィオナが小さく呟く。
「俺たちはまだ旅の途中だ。けど、こんな時間があるから頑張れるんだよな」
カイがスイカを頬張りながら笑う。
「おう、弟……じゃねぇ、カイ!」
ライオネルがにやりと笑い、大きな塊を丸呑みした。
その様子に、仲間たちはまた大笑いした。




