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第138話 祝宴と誓い

 夜が明けて間もなく、砂漠都市の広場に即席の宴が開かれた。

 解放された奴隷たちは互いに抱き合い、涙を流しながら喜びを分かち合っている。

 焚き火の周りでは歌と踊りが始まり、砂漠の夜風に笑い声が溶けていった。


「ようやく……戦い以外の酒が飲めるな」

 オルドは大杯を掲げ、豪快に笑った。


「飲みすぎて転ぶなよ」

 フィオナが眉をひそめつつも、どこか柔らかな表情を見せる。


「カイ! こっちだ!」

 ライオネルが肉の串を掲げ、弟分を呼び寄せる。

 カイは苦笑しながら受け取り、香ばしい匂いに思わず笑みをこぼした。


 その時――。


「おいおい、戦いの後にゃやっぱりこれだろ!」


 低い声と共に響いたのは、腹に響く重低音。

 見ると、魚鱗族の戦士ハルドが巨大な太鼓を抱えて現れていた。

 腕の鱗を光らせながら、豪快にバチを振り下ろす。


 ドォン! ドドン! ドンドドン!


 その力強い音に、周囲の奴隷解放者たちは思わず足を踏み鳴らし、手を叩き、笑い声を上げる。


「ハルド!」

 カイが驚きに目を見開いた。


「離脱したんじゃなかったのか?」


「俺は戦場じゃ役に立たねぇ。だが宴となりゃ別だ!」

 ハルドは胸を張り、太鼓を打ち鳴らした。

「魚鱗族の誇りは“響き”だ。今夜は俺が一番騒ぐ!」


「ガハハ! いいじゃねぇか!」

 ライオネルが豪快に笑い、踊りの輪に飛び込む。

「太鼓と獅子の咆哮、どっちが響くか勝負だ!」


「まったく……子供みたいね」

 フィオナは呆れたように言いながらも、目元は柔らかい。


「……楽しい音ですね」

 セレナが竪琴を抱え、ハルドのリズムに合わせて弦をかき鳴らした。

 重厚な太鼓と澄んだ旋律が重なり、宴の熱気はさらに増していく。


 オルドは杯を掲げ、大声で叫んだ。

「よし、今夜は飲め! 歌え! 笑え! 解放の宴だァ!」


 群衆の中から歓声が上がり、肉の焼ける匂いと酒の香りが広がる。

 人々は手を取り合い、星空の下で踊り続けた。


 カイは焚き火の赤に照らされながら、仲間たちを見渡した。

 笑顔、歌声、鼓動――それは確かに「自由」の音だった。


「この夜は始まりだ。俺たちは必ず、大陸中の鎖を断ち切る。

 誰一人、もう縛らせはしない!」


「おおおおおッ!」

 歓声と共に、杯が一斉に掲げられた。


 砂漠の夜空に、太鼓と歌と笑い声がいつまでも響き渡っていた。

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