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第137話 砂漠都市の夜明け

 夜明け前の砂漠は、ひんやりとした静寂に包まれていた。

 遠くで風が砂を運び、解放されたばかりの奴隷たちは広間の外に集まっていた。

 誰もがまだ現実を信じられず、鎖の痕を見下ろしては震える。


「……夢じゃ、ないんだよな」

 獣人の青年が呟くと、隣の精霊族の少女が涙を流して頷いた。


 カイたちもそこに立っていた。

 戦いの疲れは残るものの、セレナの歌が傷を癒し、フィオナの魔法が心を支えていた。

 ライオネルは大剣を背に担ぎ、オルドは腕を組んで空を見上げる。


「……見ろ」

 オルドが低く呟いた。


 地平線の向こう、砂の大地に黄金の光が差し始める。

 漆黒の夜を押し退け、砂漠を赤く染める朝日。


「夜が明けた……」

 フィオナが小さく息を吐く。


 その瞬間、群衆の中から歓声が上がった。

 「自由だ!」

 「俺たちは生きてる!」

 涙と笑いが混じり、次々と声が重なっていく。


 セレナは竪琴を奏で、静かに歌い始めた。

 希望の旋律は砂漠に響き、誰もが顔を上げ、光を浴びる。


 カイは朝日に手をかざし、仲間たちを見回した。

「俺たちは鎖を断ち切った。……けど、まだ終わりじゃない」


「そうだな」

 ライオネルが真剣な顔で頷く。

「砂漠の向こう、公国にも連邦にも、鎖は残ってる。

 俺たちの戦いは、これからだ」


「ええ。だからこそ、立ち止まる暇はない」

 フィオナの瞳は冷静だが、その声には確かな決意が宿っていた。


 太陽が昇る。

 砂漠都市を覆っていた闇は消え、黄金の光が解放者たちを照らした。


 ――それはただの夜明けではなかった。

 鎖に繋がれた人々にとって、新しい時代の夜明けだった。

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