第135話 勝利の代償
轟音が止み、砂煙が静かに広間から消えていく。
巨躯の名無しは崩れ落ち、もう二度と立ち上がることはなかった。
「……はぁっ……はぁっ……」
カイは膝をつき、荒い息を吐いた。
全身の筋肉が悲鳴を上げ、皮膚には裂傷が無数に走っている。
「……俺も……限界か」
隣でライオネルも大剣を杖のように突き立て、片膝をついていた。
その胸は上下し、口元から血が滲んでいる。
「カイ! ライオネル!」
駆け寄ってきたのは、セレナとフィオナ、そしてオルド。
彼女の目は潤み、竪琴を強く抱きしめていた。
「もう無理はしないでください……! 私が癒します!」
セレナが竪琴を奏でると、蒼い旋律が広間に満ちていった。
「――《蒼潮交響詠》!」
波紋のような光が二人を包み、裂けた皮膚が閉じ、折れかけた骨が繋がっていく。
焼けるような痛みが和らぎ、呼吸は次第に整った。
「……っ、身体が……軽い」
カイが驚きに目を見開く。
「ははっ……後遺症も残ってねぇな。お前の歌……効くじゃねぇか」
ライオネルが笑みを浮かべ、セレナに親指を立てた。
「大立ち回りを演じた割に、死にもしねぇとは……タフな連中だ」
オルドが戦鎚を担ぎながら豪快に笑う。
「無茶をするからよ……」
フィオナは小さくため息をついたが、その声はどこか安堵に満ちていた。
カイは立ち上がり、仲間たちを見回した。
「……ザハルも名無しも倒した。次は……」
「奴隷たちの解放だな」
ライオネルが真剣な目で答える。
広間の奥には、鎖に繋がれたまま震えている獣人や精霊族たちがいる。
怯えた瞳でこちらを見つめる彼らの姿に、カイの胸は熱く締め付けられた。
「待たせたな……必ず助け出す」




