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第134話 名無し、散る

 崩れた金貨の山を背に、名無しの巨躯が静かに立ち上がった。

 その無機質な瞳が一瞬だけ赤黒く揺らぎ、体から異様な気配が溢れ出す。


「……なに、だ……?」

 カイが息を呑む。


 名無しの全身が膨れ上がり、筋肉はさらに隆起。

 血管が赤黒く輝き、まるで“混血顕現”を模したかのような強化が施されていた。


「まさか……奴隷実験の果てに、擬似的な混血顕現を叩き込まれてやがるのか!」

 ライオネルが歯を食いしばる。


 次の瞬間、名無しは無言のまま大剣を振り抜いた。


「――《獅子咆哮斬ライオンズロア》!」


 黄金の衝撃波が咆哮のように放たれる。

 一撃、二撃、三撃――止まることなく連射され、広間全体を薙ぎ払った。


「くっ……こんな連発が……!」

 カイが翼で回避するが、衝撃波の余波で壁に叩きつけられる。


「がはっ……!」


「カイ!」

 ライオネルが駆け寄るが、その隙を狙い、さらに《咆哮斬》が唸りを上げる。


 だが、二人は背中合わせに立ち上がった。

 紅と蒼の瞳と、黄金の眼光が交差する。


「ライオネル……俺に合わせろ!」

「へっ、やっと言ったな! ああ、任せろカイ!」


 二人の呼吸が完全に噛み合った瞬間、広間の空気が変わった。

 獅子と混血の戦気が渦を巻き、炎と砂漠の嵐を伴って広がる。


「いくぞ……これで終わりだ!」

 カイが拳を握りしめ、紅と蒼の光を迸らせる。


「吠えろ――俺たちの獅子の魂ッ!」

 ライオネルが大剣を構え、黄金の闘気を爆発させた。


 二人の気迫が合わさり、炎のような砂嵐が渦巻き始める。


「百連撃――!」

「全て叩き込むぞッ!」


「――《獅混滅獄連斬ブラッド・レオン・アヴィーチ》ッ!!」


 咆哮と轟音が重なり、二人の拳と剣が同時に閃く。

 一撃、二撃、三撃――百に至るまでの斬撃と拳撃が嵐のように繰り出された。


 炎と砂漠の熱気が渦巻き、紅と蒼と黄金が交錯する光の嵐。

 名無しの巨躯は押し潰されるように打ち据えられ、抗う間もなく膝を折った。


 最後の一撃。

 カイの拳とライオネルの剣が同時に胸を貫いた。


 轟音。

 名無しの巨体が崩れ落ち、虚ろな瞳が初めて揺らいだ。


「……お前も……鎖に縛られた……被害者か……」

 カイが呟く。


 だが、名無しは何も言わず、ただ静かに砂塵へと沈んでいった。


 静寂が広間を包む。

 二人は荒い息を吐きながらも、互いに視線を交わした。


「やったな……カイ」

 ライオネルが初めて名前で呼ぶ。


「……ああ、ライオネル」

 カイもまた、笑みを返した。

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