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第132話 限界突破

 名無しの剛剣はなおも止まらなかった。

 受ければ骨が砕け、避ければ大地が抉られる。

 無言の殺戮者は、ただ淡々と二人を圧倒し続けていた。


「……クソッ……このままじゃ……!」

 カイは拳を握り、紅と蒼の瞳を燃やす。


「無茶はするな!」

 ライオネルが叫ぶが――カイは既に決意していた。


「やるしかねぇ! ――混血顕現! 二重解放ッ!」


 紅と蒼が爆ぜる。

 鱗が腕を覆い、巨人の筋肉が膨れ、翼が羽ばたく。

 さらに光が重なり、肉体の限界を踏み越える力が迸った。


「うおおおおおッ!」

 カイが突進し、拳を叩き込む。

 衝撃が広間を揺らし、石床に亀裂が走った。


 だが、名無しは無表情のまま受け止め、大剣を振り下ろす。


「ぐぅっ……!」

 カイの腕に激痛が走り、骨が軋む。

 紅と蒼の力が肉体を蝕み、血が口端から零れる。


「カイ!」

 ライオネルが咆哮し、横から斬り込む。

「無茶しすぎだ、テメェ!」


「分かってる……けど、やらなきゃ……!」

 カイはよろめきながらも拳を構える。


 名無しの剣が振り下ろされる寸前――

 ライオネルがその前に立ちはだかった。


「だったら俺が支える! お前は倒れるまで殴り抜け!」


 大剣と大剣がぶつかり合い、火花が散る。

 ライオネルの足元が割れ、筋肉が悲鳴を上げても、その眼は逸らさない。


「……ライオネル……」

 カイが呟く。


「聞け、カイ!」

 ライオネルが初めて名前を叫んだ。

「お前の拳は独りじゃねぇ! 俺がいる! だから立ち止まるな!」


「……ああッ!」

 紅と蒼の光が再び燃え上がる。

 拳と剣が並び立ち、巨躯の名無しへと突き進む。


 獅子と混血。

 二つの力がようやく噛み合い始めた。

 その戦気は、無機質な巨剣を押し返し、闇を切り裂こうとしていた。

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