第131話 獅子と翼の共鳴
名無しの剣は、ただ重く速い。
余計な感情も技巧もなく、鋼鉄の塊を振り回すだけ――それだけで脅威だった。
その無慈悲な連撃を前に、カイとライオネルは何度も地を這わされた。
「……はぁ、はぁ……! このままじゃ押し潰される……!」
カイが荒い息を吐き、血を拭う。
「おい、弟!」
ライオネルが豪快に笑い、剣を担ぐ。
「お前が右を張れ。なら俺が左を抑える!」
「勝手に決めんな!」
「黙って合わせろ!」
二人は背を合わせ、呼吸を整える。
紅と蒼の光と、黄金の気迫が重なった。
次の瞬間――名無しの大剣が唸りを上げて振り下ろされる。
二人は同時に動いた。
「はぁっ!」
カイが翼で跳び、拳を振り抜く。
巨人の力を込めた一撃が剣の軌道を逸らす。
「おおおおッ!」
ライオネルが逆方向から大剣を叩きつける。
「――《獅子咆哮斬》!」
獅子の衝撃波が直撃し、名無しの体を僅かに後退させた。
「……通じた、のか?」
カイが驚く。
「おう! 背中を預けりゃ、合わせられる!」
ライオネルが吠えるように笑う。
「……お前、意外と悪くねぇな」
「へっ、やっと分かったか!」
二人は一瞬だけ笑い合い、再び剣に立ち向かう。
名無しは相変わらず無言。
だが剣筋に、先ほどより僅かな迷いが生じている。
その隙を逃さず、二人は互いの呼吸を重ねた。
「右は俺だ!」
「なら左は任せろ!」
拳と剣が交差し、鋼鉄の巨躯を押し返す。
背中合わせのまま、二人の戦気が共鳴し始めていた。
それでも決着には程遠い。
名無しは無表情のまま立ち上がり、再び剛剣を構える。
「……まだまだ、こっからだな」
カイが拳を握り直す。
「上等だ! もっと熱くなれる!」
ライオネルの瞳は獅子のように輝いていた。
――獅子と翼の共鳴が、戦場に新たな火を灯し始めていた。




