第128話 黄金の牢獄崩壊
天井が赤黒く輝き、無数の金貨が魔法陣に吸い込まれていく。
ザハルの狂笑が広間を満たした。
「命は金貨より軽い! ならば金貨で命を潰すまで!
――《冥銭豪雨》と《金鎖牢獄》の合わせ技だァッ!!」
黄金の鎖と呪符付き金貨が同時に広間を覆い尽くす。
絶望の雨と檻。逃げ場はどこにもない。
「やらせるかッ!」
オルドが戦鎚を構え、地を踏み鳴らした。
「ここで終わらせる! 俺の全力――受けてみろォッ!!」
戦鎚を振りかざし、全身の魔力を一点に凝縮する。
彼の足元に鉄と炎の魔法陣が展開した。
「――《鋼鉄轟断破》ッ!!」
戦鎚が大地を叩き割った瞬間、鉄塊のような衝撃波が広間全体を駆け抜けた。
爆裂する金貨を弾き飛ばし、黄金の鎖を粉砕しながら直進する。
「オルド、隙を作ったわ!」
フィオナが杖を掲げ、緑の魔法陣を広げる。
「――《森羅裁断》!」
光の葉が嵐のように舞い、残る鎖を一斉に切り裂く。
「セレナ!」
「はい!」
竪琴の旋律が響き渡り、呪符に込められた爆裂魔力が解呪されていく。
「――《蒼潮交響詠》!」
蒼い波が広間を満たし、金貨の輝きが鎮められた。
「ば、ばかな……私の黄金が……!」
ザハルの顔から余裕が消え、脂汗が流れる。
「終わりだッ!」
オルドが吠え、戦鎚を振りかざす。
彼の足元に広がる魔法陣は、海原を思わせる蒼と深紅の二重螺旋。
轟くような低音が広間を震わせ、まるで地下に眠る海そのものが覚醒したかのようだった。
「砕け散れェ――!」
オルドの全身から魔力が迸り、戦鎚に巨大な渦潮の幻影が重なる。
「――《海咆滅渦》ッ!!」
振り下ろされた一撃は、大海を呑み込む荒波の渦と化し、黄金の鎖と金貨の山を一挙に巻き込み粉砕した。
轟音と共に広間が揺れ、輝きは跡形もなく砕け散る。
「ば、ばかな……黄金が……私の、黄金がァ……!」
ザハルの悲鳴が虚しく響き、体ごと金貨の雪崩に飲み込まれていった。
フィオナの《森羅裁断》が残りの鎖を切り裂き、セレナの《蒼潮交響詠》が呪符を鎮める。
三人の連携が完全に噛み合い、黄金の牢獄はついに崩壊した。
静寂が訪れる。
戦場に残ったのは、砕け散った金貨と、息を整える三人の姿だけ。
「……ふぅ。ようやく静かになったな」
オルドは戦鎚を肩に担ぎ、深く息を吐いた。
「どれだけ飾ろうと、結末は同じ。
欲望の鎖は、必ず断ち切られる」
フィオナが冷ややかに呟く。
「命は……金じゃ買えません」
セレナの歌声が広間に響き、怯えていた奴隷たちの心を優しく癒やした。




